(ブルームバーグ): 日本企業の定時株主総会のピークを26日に控え、アクティビストからの株主提案数が昨年に続いて過去最高を更新した。新型コロナウイルス禍で企業の経営環境は厳しいが、比較的低い株価を自社株買いの好機だと捉える考え方や環境・社会・企業統治(ESG)を従来以上に重視する風潮が背景にある。

  株主関連サービスのアイ・アールジャパンホールディングスのまとめによると、今年、アクティビストから株主提案を受けた企業数は22日時点で23社。最多だった昨年(16社)を上回った。同社は個人、事業会社、創業者など以外による提案をアクティビストによる提案と定義している。それらも含めて株主提案を受けた企業の総数も同日時点で69社と過去最高となった。

  アイ・アールジャパンの古田温子取締役は「アクティビストは長期的な視点で活動しているので、コロナ禍自体を一過性と見ている面がある」と提案増を冷静に受け止める。「4月ごろは企業側に今年は提案があまり厳しくないのではという楽観論があったが、5月、6月と活発な活動が見えて緊張感が戻ってきた」という。

  UBS証券M&Aアドバイザリー部統括責任者の安藤浩二氏は「アクティビストにとっては株価が下がった時が、従来狙いをつけていたターゲット企業を仕込む絶好の機会だった。その時に相当程度仕込んだのではないかと認識している」と語る。実際、日本企業との間でアクティビスト対策に関する打ち合わせは非常に多いという。

  1月に2万4000円を超えた日経平均株価は、コロナ禍の影響で3月中旬に1万6000円台に急落。その後持ち直し、24日の終値は2万2534円。一方、外出自粛などによる業績の落ち込みから現金を確保する動きが強まり、トヨタ自動車やANAホールディングスといった大企業も融資などの要請に動いている。

コロナ禍言い訳にせず還元を

  しかし、アクティビストが手を緩める気配はない。6月の総会でテレビ朝日ホールディングスなど3社に自社株買いを提案している米RMBキャピタルの細水政和ポートフォリオマネジャーは「3社はいずれも時価総額に匹敵する余剰資本・現預金を保有している企業ばかり。コロナ禍を言い訳にして、行うべき株主還元を行わないのはいかがなものか」と主張する。

  株価急落を自社株買いの好機と捉えた投資家もいた。米ダルトン・インベストメンツは、株価が急落した3月、30以上の日本企業に自社株買いを要請する書簡を送った。共同創業者のジェイミー・ローゼンワルド氏によると、3分の1以上が要請に応じたという。

  また、ESGへの関心の高まりから、コーポレートガバナンス(企業統治)関連の提案も目立った。米ファーツリー・パートナーズはJR九州に対し、コロナ禍に起因する課題解決に必要などとしてESG投資専門家を取締役候補に推薦する株主提案を行った。香港のオアシス・マネジメント創業者のセス・フィッシャー氏は日本企業のガバナンスについて「改善の余地が大きく、今後も提案は増えるだろう」と語る。

  3月に開催された帝国繊維の株主総会で自社株買いの株主提案をした英アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)は「外からは単なる自社株買いの要求に見えるかもしれないが、もっと大きな問題意識の下に対話をしている。経営改善、企業統治、株主との対話、資本効率の4つを重視している」と電子メールでコメントした。

  ここ1、2年で議決権行使助言会社や国内大手機関投資家が続々と独立取締役や政策保有株式についての行使基準を厳格化していることもあり、来年以降もガバナンス改善を求める提案は増えそうだ。

過大な要求控える

  一方、野村資本市場研究所の西山賢吾主任研究員は「コロナ禍で企業の資金繰り等に関しても影響がないとは言えない」と指摘。「実際、国内の機関投資家は少なくとも短期的に多額のキャッシュを企業から流出させるように見える提案に関しては賛同しないだろう」と見通す。

  米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は6月の総会から、コロナ禍の影響を考慮し、自己資本利益率(ROE)5%以上の基準を日本企業向けの議決権行使に適用することを一時的に停止。三井住友DSアセットマネジメントなど国内機関投資家も基準の一時緩和方針を公表している。

  アクティビスト側も過大と受け取られかねない要求は控え、コロナ禍に配慮した提案を心掛けているようだ。6月総会で3社に自社株買いや自社株消却を求めているオアシスのフィッシャー氏は「今年は多くの株主の賛成を得ることを優先し、意図的に控えめな提案にした」と述べた。

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