(ブルームバーグ): 政府は17日、今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」を閣議決定した。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて明らかになったデジタル化の遅れや、昨今の自然災害への対応が優先課題に位置付けられ、新型コロナ以前からの課題である日本の巨額債務への対応は先送りされた。

  今年の骨太方針からは、従来の方針で掲げていた2020年ごろの名目国内総生産(GDP)600兆円達成や、債務残高対GDP比の安定的引き下げ、25年度の基礎的財政収支(PB)の黒字化という目標が消えた。これらの目標が盛り込まれた18、19年の骨太方針に基づき、「経済・財政一体改革を推進することとし、20年末までに改めて工程の具体化を図る」との表現にとどめた。

  第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは、「財政、GDP共に目標達成はなかなか難しく、今数字で決めることも難しいため保留になっている」と指摘。危機の真っただ中、復興増税などコロナ対策の財源論には「今は触れるべきではない」としながらも、巨額債務を抱える日本の動向は「マーケットも注視しており、財政健全化の計画は持っているとアピールしていくことが必要」とみる。

  新型コロナ対策に伴う第1次、第2次の補正予算編成の結果、20年度の一般会計の歳出総額は160兆円と前年の1.6倍に膨らんだ。その財源を賄うための新規国債発行額は90兆円を超えた。20年度末の国債発行残高は初めて1000兆円を上回り、PB赤字は当初9.2兆円から66.1兆円に膨らむ見通し。20年度1−3月期の名目GDPは年546.8兆円だ。

  西村康稔経済再生担当相は17日の記者会見で、「今は財政を気にしていたら、国民の生命、雇用守れない」とし、当面コロナ対策に全力を挙げる意向を示した上で、「長い目で見れば財政健全化も図っていかないといけない」と述べた。麻生太郎財務相は同日の会見で、経済再生と財政再建の両立は「決して後退させるつもりはない。日本の基本方針は変わっていないという理解があるからこそマーケットも荒れていない」とし、現時点で25年度のPB黒字化目標を取り下げる考えはないとの見解を示した。

  一方、今回の骨太方針での目玉は、新型コロナで新たに露呈した課題や、相次ぐ自然災害への対応だ。行政のデジタル化やテレワークの推進、東京一極集中の是正、人材育成、弱者へのしわ寄せによる格差拡大の防止、国内回帰などサプライチェーン改革といった5つの実行計画を年内に策定すること掲げた。

  自然災害への対応としては、20年度を最終年度とする「防災・減災・国土強靭化のための3か年緊急対策」の後も、中長期的視点に立ち、必要かつ十分な予算を確保する方針を盛り込んだ。

  星野氏は、「骨太方針の位置付けは政策リストに変わっており、これに盛り込まれることによって政策が動きやすくなる」と指摘。「世界中で同じような新型コロナの経済対策がなされる中、遅さや煩雑さが問題となって日本だけがうまくいかなかった状況は直すべきだ」とし、マイナンバーの抜本見直しも含めデジタル化を進めるチャンスだと述べた。

  同時に閣議決定された成長戦略実行計画では、新型コロナ時代の新たな社会像を構想するため、7月後半から未来投資会議のメンバーを拡充する方針を示した。その上で、骨太方針にも盛り込まれたテレワークの推進や東京一極集中の是正、マイナンバーと銀行口座の連携などを今後の検討課題に上げた。

(5段落目に西村再生相と麻生財務相のコメントを入れて更新しました)

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