(ブルームバーグ): 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は27日、金融政策の設定における新たなアプローチを発表した。従来容認していたよりも速いペースの物価上昇と雇用の一段の拡大を許容することもあるとの方針に転換するもので、今後も長年にわたり低金利を維持する公算が大きいことを示唆した。

  パウエル議長は期間平均で2%のインフレ率を目指すと表明。インフレの下振れが続いた後には、物価圧力がオーバーシュートする期間を容認する可能性を示唆した。雇用の最大化に関しても姿勢を変更し、労働市場が上向く範囲の拡大を容認することになる。

  カンザスシティー連銀主催の年次金融政策シンポジウムでバーチャル形式で講演したパウエル議長は、「最大限の雇用の実現は広範囲で包摂的な目標だ」と説明。「この変更はわれわれが力強い労働市場の重要性を認めていることを反映しており、 特に低・中所得層地域の多くではなおさら重要だと考える」と述べた。ワイオミング州ジャクソンホールで例年開催されてきたこのシンポジウムは、新型コロナウイルス感染拡大を受けて今年はオンラインでの開催となった。

  INGファイナンシャル・マーケッツのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は、「金融当局が近く利上げを行うことはないだろう」とした上で、「当局は金利がより長い間、より低い水準にとどまるが、インフレが加速することはないので心配する必要はないと言っている」と説明した。

  新型コロナ禍に見舞われるまでの米経済は、過去最長の景気拡大局面にあってマイノリティーや女性など多様なグループが雇用面で恩恵を享受していた。失業が急増し、人種間の不平等を巡り米国全土で社会不安が起こった現在、金融政策がどうすれば地域社会全般を支援できるかという問題が生じている。

  米金融当局は長期目標に関する新たな声明で、「雇用の最大レベルへの不足分」を考慮して政策決定を下すことになると説明した。従来は「最大レベルからの偏差」と言及していた。この変更は、低失業率が過度のインフレ高進を招くとの懸念を従来ほど重視しなくなったことを示唆している。

  また声明は物価安定に関し、連邦公開市場委員会(FOMC)は「期間平均2%というインフレ率の達成を目指す」と表明。インフレ率が2%を下回る期間が続いた後は、しばらくの間2%を緩やかに上回ることを目指すとしている。

  一方でパウエル議長は「過剰なインフレ圧力が顕在化するか、インフレ期待が当局目標と合致する水準を上回る場合」は、ちゅうちょなく行動するとコメントした。

  パウエル議長が発表した方針変更は、2019年初めに着手した金融政策の戦略や手段、コミュニケーション手法を見直す作業から生まれた。連邦準備制度は今後もこうした見直し作業をほぼ5年ごとに行う方針だ。

  12年に2%のインフレ目標を公式に設定して以来、連邦準備制度がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数は平均でわずか1.4%上昇と、目標をほぼ一貫して下回っている。

  低インフレが低金利につながっていることから、景気悪化に対応する上で金融当局の能力に制約が生じ、景気下降を深刻化および長期化させる恐れがある。連邦準備制度が27日に公表した金融政策戦略に関する文書でも、政策金利面のこうした制約によって、「雇用やインフレに対する下降リスクが高まっている」と指摘した。

  このほか同文書では、金融の安定性の問題も当局が長期的な目標を達成する能力に影響を及ぼす可能性があるとの認識も示された。

  パウエル議長は今回、連邦準備制度として実際にどのようにインフレ率押し上げを目指すかという課題を今後のFOMCでの議論に委ねた。ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハッチウス氏は、9月15、16両日開催の次回FOMC会合でフォワードガイダンスと資産購入プログラムの変更が見込まれると話した。

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