(ブルームバーグ): 三井住友フィナンシャルグループが、今年度から超富裕層事業の強化に本腰を入れている。ともに傘下で中小企業向け融資に強みを持つ三井住友銀行と旧4大証券の一角としてサービスを洗練させてきたSMBC日興証券がより緊密に連携するなどして、企業オーナーを中心とした優良顧客に攻勢を掛ける。

  4月から銀行、証券、SMBC信託銀行が別々に行っていた事業を「SMBCプライベート・ウェルス」のブランドに統一。3社のサービス内容を熟知し、連携を深める事務局に当たるプライベート・ウェルス戦略部をSMBC日興に設置した。推定保有資産20億円以上の企業オーナーを中心に、資産運用や事業承継のほか子弟留学などの非金融サービスも含めた窓口を集約し、取引拡大を目指す。

  SMBC日興の坂本宣常務執行役員(56)はブルームバーグとのインタビューで「今までわれわれが提供できなかったサービスや、将来の課題を顧客に提案できるようになることが大きい」と説明。これまでも顧客の要望を受けて銀行や信託銀を紹介していたが、今後は顧客の同意を前提に3社の利用可能なサービスを積極的に提案できるワンストップ・サービスに近づけていく。

  現在、3社で計200人ほどのプライベート・バンカーを対象に、相互の関連サービス勉強会を定期的に実施している。また、ワインセミナーなどの非金融サービスについては、各社がそれぞれ開催していたイベントやサービスをどの顧客でも利用できるよう統合する方針だ。同グループの超富裕層の対象顧客1万7000人のうち、富裕層サービスを利用していない1万1000人の潜在需要の取り込みを目指す。

  日本の富裕層向け事業については、金融機関が相次いで強化を打ち出している。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の浜田直之副社長は、ブルームバーグの取材に「富裕層事業の拡大余地が圧倒的に大きい。グローバルでも最も魅力的な市場だ」と言及。三井住友トラスト・ホールディングスは富裕層事業でスイスのUBSと提携。米ゴールドマン・サックス・グループも日本市場に参入する。

  他社との差別化について、SMBC日興の坂本氏は「メガバンクと旧4大証券の組み合わせは当社だけで、銀行、証券双方が大きな基盤を持っていることが強みだ」と述べた。三井住友銀の2020年3月末の中小企業向け貸出比率は60.6%。上場企業の創業者一族や未上場企業オーナーなどの潜在顧客を多数抱える。

ロスチャイルドとの提携商品も

  また、SMBC日興は三井住友F傘下入り前の03年から欧州の金融財閥ロスチャイルド家が創業したプライベートバンキング事業を中核とするLCFロスチャイルドと業務提携しており、昨年はロスチャイルドが組成したプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドを富裕層顧客に販売。イスラエルのIT企業に特化した商品で、投資家は投資先企業との商談仲介も頼める。

  坂本氏は「今後もロスチャイルドとの提携活用などでほかにはない商品を提供していきたい」という。今後、リターンの高い商品が用意できれば、ヘッジファンドも品ぞろえに加える検討をしている。SMBC日興は国内リテールで21年3月末までに7000億円の新たな資産獲得を目標に掲げており、このうちプライベート・バンキング本部としては「相当な割合」を目標にしていると明かした。

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