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中国アリババグループの金融会社アント・グループは世界最大規模となりそうな新規株式公開(IPO)を計画している。7億1000万人ものアクティブユーザー数を抱えていることなどが注目を集めるが、投資家は、アリババの宿敵であるテンセント・ホールディングス(騰訊)がアントの中核事業に与える長期的な脅威に目を向けた方が良さそうだ。

  関係者によれば、アントは香港と上海での重複上場を申請する計画で、企業評価額約2250億ドル(約23兆9000億円)で300億ドル前後の調達を目指す。同社はアリババグループを創業した馬雲(ジャック・マー)氏の重要資産。巨額IPOが終われば、旧来のライバルであるテンセントとの新たな戦いが控えている。テンセントは決済から資産管理などの分野でアントの縄張りを侵食しつつあるからだ。

  中国の2大企業であるアリババとテンセントはオンラインの覇権争いを繰り広げており、戦いの場はソーシャルメディアから電子商取引、クラウドコンピューティングなどあらゆる領域に及ぶ。その勝敗の鍵は、多くの消費者が利用するオンライン決済の手段をコントロールすることにある。

  テンセントがアントに対して持つ優位性の1つが、10億人余りが利用するモバイルアプリの「微信(ウィーチャット)」だ。同アプリの決済サービス「ウィーチャットペイ(微信支付)」は、中国の消費者を同国の小規模事業者のみならず、ウォルマートのような大企業とも結びつける決済エコシステムとしての役割を担っている。

  アントの決済サービス「アリペイ(支付宝)」はかつて、中国のモバイル決済全体の75%を占めていた。それが今年1−3月には55%になり、一方でテンセントの市場シェアは39%に拡大した。

  DZTリサーチのアナリスト、ケ・ヤン氏(シンガポール在勤)は「テンセントとアントはトラフィックとユーザーを巡る激闘を繰り広げている。防衛線を張っているだけでなく、互いの領域を攻撃し合っている」と指摘。「ある場所で負けたら、別の場所で追い付かなくてはならない」と述べた。

  テンセントは今、ウィーチャット上に電子商取引サービスを構築することで、アリババのオンライン・マーケットプレイスから事業者やブランドを引き寄せようとしている。また、決済ビジネスでの戦いを強化しており、特にアリババのエコシステムと競合する企業からのトラフィック誘致を目指している。

  実際、フードデリバリーを手掛ける美団点評は先月、一部ユーザーの決済手段としてアリペイの利用を受け付けなくした。オンライン小売り中国2位のJDドットコム(京東)は以前からアリペイを排除し、自社システムとウィーチャットを採用している。

  メディアなどの分野ではテンセントが支配的だが、両社にとって最も利益が出るビジネスは、決済のバックボーン上に構築された金融サービスであり、そこはアントが得意とする分野だ。

  アントのIPO目論見書によると、2020年1−6月には消費者や中小企業向けオンライン融資が決済サービスを抜いて、全体の39%と同社最大の収入源となっている。

(7段落目以降を追加して更新します)

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