(ブルームバーグ): 日産自動車のカルロス・ゴーン元会長(会社法違反の罪などで起訴)の役員報酬を過少に報告したとして、金融商品取引法違反の罪で起訴された日産元代表取締役のグレッグ・ケリー被告と法人としての日産に対する初公判が15日、東京地裁で開かれた。ケリー被告は無罪を主張し、検察側と全面的に争う姿勢を示した。一方、日産側は罪を認めた。

  ゴーン元会長の側近として権勢をふるったケリー被告はこの日、白のシャツにダークスーツ、赤系のストライプのネクタイの服装にマスクを着用して法廷に姿をあらわした。

  検察側は冒頭陳述で、ケリー被告がゴーン被告や日産の秘書室長だった大沼敏明氏と共謀してゴーン被告の報酬を有価証券報告書で実際より数十億円少なく報告するなどし、金商法に違反したと指摘した。

  罪状認否で日産側の代理人が起訴内容について「間違いありません」と述べ、日産として争わない姿勢を示したのに対し、ケリー被告は翻訳を交えて英語で約15分にわたって自らの主張を展開し、「容疑を否認する。犯罪になるような共謀には関与していない」と述べた。

  検察の冒頭陳述書によると、1億円以上の役員報酬の開示が義務化された2010年の制度変更を受け、10億円をはるかに上回る報酬を受けていたゴーン被告は開示によって高額報酬が明らかになることを避けるため、ケリー被告らに報酬額を10億円未満に抑える方策の検討を指示。

  報酬の一部のみをゴーン被告に支払ったうえで有価証券報告書ではその金額のみを報酬として開示し、残額は支払いを延期した上で「未払報酬」として管理することで開示を避けつつ、ゴーン被告が後で報酬を受けられるよう共謀したなどととしている。

  これに対してケリー被告は、1990年代後半に経営危機に陥っていた日産が仏ルノーの出資を受け、ゴーン被告が経営改革に着手して以降、日産の業績が大幅に回復したと指摘。

  ケリー被告は当時のゴーン被告の報酬水準は同業他社と比較して相当低かったため日産のV字回復に手腕を発揮したゴーン被告を他社に奪われるリスクが浮上していたと説明。他の幹部らも交えて「合法な手段」について検討を開始したとし、「証拠によって私が法違反を犯していないことが示されると信じる」と述べた。

ゴーン被告の公判見通し立たず

  ケリー被告は米国人で2018年11月19日、金商法違反容疑でゴーン被告とともに逮捕され、翌月に起訴された。

  ケリー被告は会社法(特別背任)違反容疑でも追起訴されたゴーン被告より早い時期に保釈が認められて以降は都内で生活、初公判のこの日に64歳の誕生日を迎えた。公判は来年7月まで続き、判決は来秋まで出ない見通しだ。

  ケリー被告の妻、ディー氏は初公判の午前の部の終了後に記者団に対し、「ゴーン被告がここにいないのは残念だ。しかしゴーン被告は自分のために行動する必要があった」と語った。ケリー被告はゴーン被告とこれまで一切の接触はないという。

  日産はウェブサイトで同社が起訴されたことは「極めて重く受け止めている」とのコメントを発表。ゴーン、ケリー両被告については社内調査でも「意図的に行われた重大な不正、並びに企業倫理に対する著しい逸脱行為があった」と確認しているとし、今後、一連の不正行為に関する真実が裁判所の判決により明示されると期待していると述べた。

  ゴーン被告は昨年末、保釈中にプライベートジェットでひそかに日本を出国してレバノン入り。家族とともに今も同国で暮らしており、日本で同被告への公判が開かれる見通しは立っていない。

(検察の冒頭陳述と日産、ケリー被告の妻のコメントを追加します)

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