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ソフトバンクグループの社内では少なくともこの5年間、株式の非上場化を巡る議論が繰り返されてきた。複数の関係者によれば、孫正義社長以外のほぼ全員が反対しているという。

  理由はある。NTTによる4兆円規模の子会社への株式公開買い付け(TOB)が先月発表されたが、ソフトバンクGのように時価総額14兆円規模の企業買収を誰も手掛けたことがないためだ。孫氏でさえもそれほど巨額の買収資金確保には苦労するだろう。また、関係者の1人は、一般株主なくして孫氏の衝動的な行動を監視するのは難しいだろうと幹部らは懸念していると話す。

  だからといって経営陣による買収(MBO)が全く不可能というわけではない。関係者によれば、ソフトバンクGは今年、株式の買い付けによる非上場化を再検討した。孫氏は自社の時価総額が依然としてアリババ・グループ・ホールディングなど保有する資産の価値を下回っていることにいら立っているという。

  関係者の1人によれば、3月にソフトバンクGの株価が記録的に下落した後に、MBOに向けた準備作業が開始されたが、その後自社株買いと資産売却などで株価が倍増したことから持ち越しとなったという。孫氏がMBOに対して真剣になり過ぎた時には、内部者がメディアにリークし株価を上げ、MBOが魅力的でなくなるよう仕向けているとの見方まで浮上しているという。

  ソフトバンクGの関係者は、社内でMBOに賛同している人間はおらず「マサだけだ」と一笑。「誰もがみな悪いアイデア、あるいは無用の長物だと受け止めている。しかし、決めるのは彼だ」と話した。

  ソフトバンクGはこの記事についてコメントすることを控えている。 

  孫氏は2月12日の決算発表会見で、MBOの可能性についての質問に対し、「選択肢としては当然ある」とし、「一時私⾃⾝も、もう株式を⾮公開化して、⾃分個⼈の会社にしてしまおうかと真剣に思ったこともある」と明かした。

  一方で、情報開示や透明性、資⾦調達の観点から市場で上場を続けるメリットについて次のように語った。「経営の内容を、常に舞台に⽴ちながら、襟を正して、透明性を保って、投資家の皆さんあるいは貸し付けをいただいている皆さんに対して、われわれが継続してその透明性を確保する」。

  野村証券の星千鶴アナリストは9月17日付のリポートで、ソフトバンクGにとって「MBOや非上場化というテーマを議論することはタブーではない」と指摘。あくまでも「頭の体操」として、買収プレミアムが30%と想定すると買い取り額は約15兆円、単体の有利子負債を全て買い取った場合には株式と合わせて約23兆5000億円になるとした。

  NTTによるNTTドコモのTOBでは、完全子会社化のための資金として、三菱UFJ銀行からの1兆5000億円を含め総額4兆3,000億円を上限に金融機関からの借り入れを行う。

  星アナリストは一般論として、「MBOとなれば多額の借り入れが必要で、格下げリスクが高まる」と述べた上で、「ソフトバンクは債務削減を行おうとしており、新たに何兆円も借り入れれば、格下げリスクとなるのではないか」と指摘した。MBOの実現可能性についてはコメントしないとしている。

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