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上海にある交通銀行のウェルスマネジメント部門のトレーディングフロアには、ここ1世紀で最悪となった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の痕跡はほとんど見当たらない。

  最近の金曜朝に見られたシーンだが、同行のトレーダーは全員が出勤、開放感のあるオフィスで約2フィート(約60センチメートル)間隔で座る。マスクを着けている人は誰もおらず、中国の取引所が昼休みとなる正午には、昼食を取るため階下の食堂に一斉に向かった。

  同じような光景は上海中で繰り広げられている。上海は新型コロナ対応を世界で初めて迫られた主要金融センターであり、感染拡大を唯一食い止めてきた(6月以降、市内の新規感染者は報告されていない)。当初の状況はロンドンやニューヨークほど深刻ではなかったものの、パンデミックが金融業界の働き方を永遠に変えるとの一部予測とは対照的な姿を新型コロナ以前の平常に近い状態に戻りつつある上海が示している。

  市内の36万人余りの金融のプロは依然として体温測定や厳格なIDチェックを求められ、従業員を交代制で出勤させている企業もなおある。しかし、上海のトレーダーやバンカーらはほとんどの場合、マスクを着用せずに、同僚と対面で会話し、会議室に訪問者を迎え、顧客に会うため国内を飛び回っている。金融街のレストランもにぎわい、通勤地獄も復活した。

  金融機関などを顧客に持つ法律事務所ボス・アンド・ヤングのパートナー、ヒューバート・ツェ氏(上海在勤)は「ビジネスはかなり元通りに戻った」と語る。

  新型コロナワクチンが普及したとしても、上海で起きたことが他の金融センターでも見られるようになる保証はもちろんない。しかし、在宅勤務が企業文化や経済全体に及ぼす影響について懸念を表明しているJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)やブラックロックのラリー・フィンクCEOら金融界の大物にとって、上海の復活は希望の光だ。

  上海の交通銀では現在、従業員1万人全員が主にオフィスで働いている。事情に詳しい複数の関係者によれば、JPモルガンでも従業員の大半が上海タワーにあるオフィスに戻っている。ソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保するよう指示されているものの、顧客に会い、食事を共にし、マスクなしで通路を歩ける。一方、世界全体ではJPモルガンの従業員の大多数は依然として在宅勤務のままだ。  上海にあるシティグループの主要拠点ではスタッフの約90%がオフィス勤務を再開。広報担当者によると、香港の復帰率は約75%だ。スイスのUBSグループは中国の全従業員を対象に地方政府の指針に従って職場に戻ることを認めているが、世界全体の従業員のオフィス復帰率は20%にとどまっている。

  欧米では新型コロナ感染再拡大が加速しており、銀行が通常に戻る日は遠そうだ。JPモルガンは9月、消費者部門の従業員に対し、来年になるまで在宅勤務を続けるよう指示した。オランダの大手銀行はパンデミック終息後も従業員が半分程度の時間は自宅で働くだろうと予想。ドイツ銀行やみずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングスなどはオフィススペース削減に向けた措置に着手している。

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