(ブルームバーグ): 中国にとって米大統領就任前のドナルド・トランプ氏はほとんど知らない存在だったが、バイデン前副大統領は中国もよく知る人物だ。だが、この4年間で根本的に変わった米中関係が早期に修復される公算は小さい。

  1970年代以降の対中関与政策を支持するバイデン氏は、副大統領時代の2011年に国家副主席だった習近平氏と幅広く会談を行ったこともあるが、その後の10年間で対中姿勢を硬化させている。選挙運動中は中国政府の香港での行動を激しく非難し、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒住民に対する政策が「良心に照らして受け入れ難い」と語り、習国家主席を「悪党」とさえ呼んだ。

  トランプ政権が中国製品に追加関税を発動したり、華為技術(ファーウェイ)や動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技( バイトダンス)など中国企業に対する措置を講じたりする中で、中国は米主導の世界秩序に対する脅威だとの認識が党派を超えてワシントン内に広がっており、バイデン氏の対中姿勢の変化はこうした空気を映し出している。

  バイデン氏は中国の抑え込みに向けて同盟国とより緊密に協力する一方で、自国の主張を強める中国へのけん制はトランプ政権と同様に恐らく続けることになりそうだ。

  中国外務省の汪文斌報道官は9日、米大統領選に関して中国はいつ声明を発表するのかとの質問に対し、米国は健全で安定した米中関係の発展を促進すべきだと中国は常に考えていると答えた。

  汪報道官は北京で開いた定例記者会見で、今後は米国の次期政権が中国と同じ方向で取り組むことを期待すると説明。民主党候補のバイデン前副大統領が勝利を宣言したことに留意していると述べた。選挙結果は米国の法律と手続きに従って決まると理解しているとし、第1段階の貿易合意に関する質問には担当部署に問い合わせるよう求めた。

  オバマ前政権とトランプ政権でアジア地域で外交官を務めたジェームズ・グリーン氏は「新政権は中国に甘いという批判から脇を守る必要がある」と指摘。「2010年代半ばの米中関係への回帰は望めない」と話す。

トランプ政権の対中国政策、成果乏しく−対中イメージ悪化には成功

  トランプ政権からバイデン政権になって最大の変化は、同盟各国に対する姿勢に現れるだろう。トランプ氏は安全保障面で「ただ乗り」したり、貿易で不正を働いたりしているとして日本や韓国、欧州など伝統的な同盟相手を非難していたが、バイデン氏は同盟国と緊密に協力し、中国に協調行動を取らせると約束している。

  こうした手法が効果的か否かに関係なく、米国の同盟重視への回帰は中国政府を悩ませることになりそうだ。在サンフランシスコや在ニューヨークの中国総領事館に勤務経験のある元当局者、何偉文氏は「バイデン氏は同盟国との関係を改善し、中国を抑え込もうと結束に動くだろう」と指摘。現在は悪化している米国と欧州同盟国の関係が改善すれば、中国にとっては痛手になるというのが同氏の見方だ。

  バイデン氏の大統領選勝利が確実になっても中国の公式反応は今のところ乏しく、習主席からも公の祝意は伝えられていない。共産党系の新聞、環球時報の胡錫進編集長は、中国政府は「対米関係で極端な混乱を排除する可能性を探るため、バイデン氏のチームと連絡を取る必要がある」とツイートした。

  国務院(政府)顧問で、中国人民大学で米国研究センターの主任を務める時殷弘氏は「バイデン氏の台湾や新疆ウイグル自治区、香港、南シナ海を巡るスタンスはトランプ氏と一致する公算が大きい」と語る。

  米国の軍事的な優先事項も継続が見込まれる。バイデン氏はオバマ前政権時に副大統領として中東からアジアに軸足を移す推進役を果たした。中国の南シナ海進出をけん制する取り組みを含め、今では「インド太平洋」と呼ばれる同地域への重視を維持するとみられる。

(第5、6段落に中国外務省報道官のコメントを追加し更新します)

©2020 Bloomberg L.P.