(ブルームバーグ): 発行体がESG(環境・社会、企業統治)目標を達成できなければ利率上昇などのペナルティーを科す新たなタイプの債券に対し、一部の投資家は懐疑的な見方を示している。

  いわゆる「サステナビリティー・リンク・ボンド」は、発行体が事前に定めたESG目標を達成できなかった場合に利率が上がる仕組みを持つ。日本ではヒューリックが10月に初めて発行したが、投資家の需要はいまひとつ盛り上がりを欠いた。発行体の目標未達を理由に投資家が利益を得るのは倫理的に問題ないのか、という疑問が投資家の間で浮上したからだ。

  ESG投資の盛況が企業にとってゆがんだ発行インセンティブになりかねないとの議論は以前からあった。「債券デザイナー」たちが先端を行くあまり商品設計に欠陥のあるESG債が生み出されるという、より漠然とした懸念もある。例えば環境債のラベルを貼りながら、本当は環境改善効果がない資金調達(グリーンウォッシュ)を見極めるのに、多くの投資家はすでに苦労している。

  サステナビリティー・リンク債はイタリアの電力会社エネルが2019年9月に世界で初めて発行。シャネルやスイスの製薬会社ノバルティスなど世界でも発行実績は10例ほどにすぎない。ブルームバーグが集計したデータによると、発行総額は約118億ドル(約1兆2300億円)と、約1兆1000億ドルのESG債市場の中では微々たるものだ。

  三井住友海上火災保険の小林奈央・投資部課長代理はESG債への興味はあるとしつつ、リンク債については利率変動の本質的な意義が判然としないと言う。「発行体の努力で利率の上昇を防げると捉えれば報酬と言え、それは投資家から発行体への寄付のようなものでもある」と指摘。一方で目標未達の場合の利率上昇を「発行体への懲罰と考えた場合、それを投資家が受け取るのには違和感がある」と話した。

  国際資本市場協会(ICMA)が6月に「サステナビリティー・リンク・ボンド原則」を策定しており、今後はリンク債の発行が拡大する兆しもある。欧州中央銀行(ECB)が来年1月からリンク債をリファイナンスオペの受け入れ対象にすると発表したのをきっかけにリンク債の発行は増えると、HSBCホールディングスはみている。

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