(ブルームバーグ): 任天堂の創業家、山内家のファミリーオフィスが企業買収に参戦する。海外で企業の創業家など富裕層が運用するマネーの動きが活発化する中、日本でも同様の動きが広がる可能性がある。

  事情に詳しい複数の関係者によると、山内家ファミリーオフィスは、ジャスダック上場のソフトウエア開発会社、ジャパンシステムの経営陣による買収(MBO)を資金支援する。同ファミリーオフィスの運用資金総額は1000億円超に上る。

  ジャパンシステムを巡っては、香港を拠点とする投資会社、ロングリーチグループが最終的に全株取得を目指して株式公開買い付け(TOB)を実施している。一方で、代表取締役の川田朋博社長をはじめとする現経営陣は買収に反発し、MBOを提案している。

  関係者によると、山内家ファミリーオフィスは川田社長ら執行役員によるMBOが企業価値の向上に資すると判断。川田社長が設立する買収目的会社に優先株で約35億円を出資する方向で調整している。

  銀行からの借り入れも含めて買収総額は当面、150億円程度を見込んでいる。ロングリーチによるTOBでは1株当たり590円と提示されているのに対して、MBOでは同615円となることが想定されている。川田社長らはMBOを実現させるために期限の2月15日までに対抗TOBを開始することも選択肢の一つとして検討。TOBを正式表明すれば、争奪戦に発展することになる。

  山内家ファミリーオフィスの運用資金は、家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」の成功により任天堂を世界的企業に押し上げた3代目社長、故・山内溥氏が保有していた株式が原資だ。

  現在は、資産を相続した親族らが運用している。任天堂株も保有しているという。巨額の資金運用の実態は明らかではないが、企業に直接投資するケースが明らかになるのは今回が初めてだ。

   山内家ファミリーオフィスの村上皓亮最高投資責任者は、MBOの支援について「現時点では何もコメントできない」と話した。また、ジャパンシステムの川田社長は「現時点でのコメントは差し控える」とした。

  ジャパンシステムの株式は、親会社の米情報技術サービス会社、DXCテクノロジーが約54%を保有している。DXCが売却先として選定したロングリーチは昨年12月24日にTOBを発表した。

  ジャパンシステムの取締役会はTOBに「賛同」の意見表明を出したものの、売却に応じるかどうかは株主の判断に委ねる「中立」を表明。経営を監督する取締役会と、執行を担う経営陣の考えが分裂する異例の展開となっている。

  ファミリーオフィスは、欧米の富裕層が一族の永続的な発展を目指して設立するもので、米ロックフェラー家が始めたとされる。大手コンサルティング会社のキャップ・ジェミニが発行するワールド・ウェルス・レポート2020によると、19年の世界の富裕層の資産と人数は、全世界で約9%増加した。

  富裕層の潤沢な資金は、金融市場の注目を集めており、ヘッジファンドやアクティビストファンドにとって重要な資金源となっている。

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