(ブルームバーグ): 気候変動を原因とする海面上昇が、科学者の最も悲観的な予測を上回るペースで進みそうだ。既に対応に苦慮している沿岸地域に、洪水のリスクが従来の予想よりも早く訪れることになる。

  科学誌オーシャン・サイエンスに2日掲載されたリポートでは従来の見通しを修正し、沿岸に住む人口の4割が海面上昇で影響を受けると試算。数兆ドル規模の被保険資産が洪水や大型暴風雨、潮位の上昇で損害を受けるリスクはいっそう高まる見通しで、海面上昇を抑制するため、各国は従来見込まれた以上に温暖化ガスの排出抑制に取り組む必要があるとも示唆した。

  リポートの共同執筆者であるコペンハーゲン大学の地球物理学者、アスラク・グリンステッド氏は今回の修正により、従来予測の範囲内に海面上昇を維持するには世界全体で約5年分の排出量に相当する2000億トンの排出を追加削減する必要性が明らかになったと指摘した。

  研究者らは国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のモデルを土台に、数世紀さかのぼったデータを組み込んで分析。IPCCモデルの多くは過去150年間しか考慮していなかった。新たな分析によると、気温がセ氏0.5度上昇するだけで今世紀末までに海面は50センチメートル上昇する可能性がある。2度上昇なら海面の上昇は1メートルを超え、既存の気候変動対策で見込まれている予測を優に上回る。

  「海面上昇の予測で現在基本としているモデルは、十分に精度が高いものではない」とグリンステッド氏は指摘。「将来のシナリオと過去にさかのぼった所見を比較したところ、現在の海面上昇ペースとの比較で不整合が生じる」と説明した。

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