(ブルームバーグ): 米国で新型コロナウイルスワクチンの接種が進むにつれ、急速な景気回復への期待が膨らんでいる。しかし米国債の保有者にとって、これは懸念材料だ。米国債は1980年以降で最悪の四半期を終えたが、当時のボルカー米連邦準備制度理事会(FRB)議長は積極的な利上げでインフレに対応していた。投資家は今、経済正常化に伴う一段の利回り上昇や損失拡大の可能性を覚悟し身構えている。

  ブルームバーグ・バークレイズ米国債指数は1−3月(第1四半期)に約4.25%下落。米民主党が1月、上院過半数をぎりぎり得たことで1兆9000億ドル(約210兆円)規模の経済対策に道が開かれ、米国債に圧力がかかった。ワクチン接種進展のほか、上昇する利回りの押し返しに消極的な米金融当局の姿勢も加わり、10年物米国債利回りは2020年1月以来の高水準に達した。

  この流れは4−6月(第2四半期)も続くとトレーダーと投資家はみている。バイデン政権はさらに数兆ドル規模の財政支出を計画しているほか、ワクチン接種も一段と加速させようとしているからだ。こうした中でボラティリティーが高まる可能性も指摘される。

  ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略責任者スバドラ・ラジャッパ氏は、第1四半期の市場は「利回り上昇に向けてエンジン全開だった」とした上で、「ここからは着実な上昇が間違いないと思う」と話した。

  10年物の利回りは1月から約80ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、3月30日に1.77%に達した。20年3月には0.31%と過去最低を記録していた。30年債も同様の展開。いずれも、四半期ベースの上昇幅は16年の方が大きかったが、出発点の利回りが低いため今回の方が損失が大きい。

  インフレ連動債が示す向こう10年のインフレ期待(ブレークイーブン・レート)は第1四半期に39bp上昇し一時は13年以来の高水準の2.37%に達した。

  ボルカー元議長が格闘した約40年前とは比べ物にならない程度のインフレだが、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標はゼロ付近、量的緩和(QE)が続く今、短期金利と金融環境を巡る状況は当時と大きく異なる。

  景気に関する明るいニュースの大半は既に市場に織り込まれているため、「極めて無秩序な」米国債売りは第2四半期には落ち着くだろうと、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト、ラルフ・アクセル氏は予想。しかし、景気回復の高い期待はまだ完全に実現したわけではないため、今後の展開が衝撃をもたらすリスクはあると指摘した。

  「起こり得る展開の幅は広い。不況のどん底もあり得るし、数十年で最高の成長時期が訪れるかもしれない。われわれはある意味、この2つの可能性の間で揺れている」と話した。

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