(ブルームバーグ): 日本銀行は国債買い入れ総額を前月から大幅に減らす。黒田東彦総裁が金利の低位安定を優先する姿勢を強調してきただけに、債券市場参加者からは戸惑いの声が上がっている。一方で、市場機能を回復させるきっかけになるとして歓迎する向きもある。

  日銀は前日に発表した4月の国債買い入れ予定で、幅広い年限の実施頻度を減らし、残存期間1年を超える利付国債全体の購入額を3月に比べて5000億円減らす方針を示した。特に5年超10年以下の減額幅が3000億円と大きく、野村証券によると日銀が2013年に量的・質的金融緩和に踏み切って以来、最大規模となる。1日の国債市場で長期金利は一時、前日比3ベーシスポイント(bp)高い0.12%に上昇した。

  SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは、黒田総裁が当面イールドカーブ全体の「低位安定を優先」すると繰り返していたことで、買い入れ削減はあっても最小限との見方が多かっただけに、総額を「これほどしっかり落とすというのは意外だった」と指摘する。

  日銀は昨年12月の金融政策決定会合で、3月会合をめどに政策の点検を行うと表明。年明け後、日銀が長期金利の変動幅を拡大するとの観測報道をきっかけに金利は大きく上昇した。しかし、黒田総裁が3月5日の国会答弁で「変動幅を拡大する必要があるとは考えていない」と述べたことで思惑はいったんは沈静化した。

  3月19日の日銀会合では長期金利の変動幅をゼロ%を挟んで上下0.25%に拡大したが、黒田総裁は変動幅を明確化するもので拡大したわけではないと述べるとともに、「イールドカーブを立てるように何かすることも全く考えていない」と言明。日銀の決定や黒田総裁の発言を受けて長期金利は再び低下傾向を強めていた。

  JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長は「黒田総裁のハト派発言に翻弄(ほんろう)されたと感じている市場参加者が多いのではないか」とした上で、黒田総裁の発言と実際の決定に「齟齬(そご)が生じ始めている」と指摘する。

  一方で、市場機能が回復するきっかけになると歓迎する向きもある。大和証券の谷栄一郎チーフストラテジストは、日銀の介入が減ることで「本質的な市場変動要因が出やすくなる」と評価する。

長期金利はレンジ継続

  国債買い入れの大幅な減額にもかかわらず長期金利は狭い範囲の値動きにとどまるとの見方が多い。バークレイズ証券の海老原慎司ディレクターは、短期的に「投資家の押し目買いの目線が幾分切り上がるかもしれない」が、日銀が0.25%の上限を絶対阻止する姿勢を示している以上、レンジ相場が続くとみる。

  大和証の谷氏も「金利上昇に対する警戒感から0.2%は超えないだろう」と指摘。当面のコア(中心)レンジは0.10%〜0.15%と想定する。SMBC日興の森田氏も「外債投資のキャピタルロスへの警戒もあり、消去法的に長めの国債を指向する投資行動が多い」として、当面は0.15%を上限とみている。

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