(ブルームバーグ): 米国債券市場の「タントラム(かんしゃく)」が、比較的低金利で借り入れを増やしてきた債務国に恐怖感を与えている。

  米経済が勢いを増す中で、オーストラリアやイタリアなどの国債利回りは米国債利回りの上昇を追いかけている。これに伴う借り入れコストの増大は、新型コロナウイルスの感染拡大を制御できず対策を延長する欧州諸国の景気回復を脅かしかねない。また、ドル建て資金調達に依存する新興国にも歓迎されない。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのクレジット責任者トーマス・ワッカー氏は、利回り上昇を投資家が注視していると指摘。「金利コストが上昇すると、投資や改革に費やされたかもしれない国家財政の余裕が減り、将来の赤字を増やす。債務の持続可能性はもっともな懸念事項だ」と述べた。

  ブルームバーグ・バークレイズの指数データによると、米国債利回りの急ピッチな上昇ペースを受け、主要7カ国(G7)の国債利回りは今年に入って27ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し0.48%と、年初の2倍強の水準に達した。

  そのうちどれだけ米国債市場動向に起因するのか特定は難しいものの、INGグループのアナリストは米国がけん引役だと指摘し、米国と隔絶されていれば欧州ではリフレトレードは起こらないとさえ主張する。

  米国の大型経済政策のせいにできるかどうかはともかく、政府債務の増加は政策当局者にとっても投資家にとっても頭痛の種となっている。

  欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は先週、ブルームバーグテレビジョンとのインタビュー で、債券利回りの上昇を阻止するため持てる全ての手段を駆使することに及び腰になることはないと述べた。ECBは借り入れコスト上昇に対応し、債券購入を加速している。

  欧州委員会のデータに示されたユーロ圏諸国の債務11兆ユーロ(約1430兆円)を基にすると、欧州債全般に利回りが10bp上昇すると、年間約110億ユーロの金利負担が増す計算となる。

  ジュピター・インベストメント・マネジメントのマネーマネジャー、マーク・ナッシュ氏によれば、新興国は既に米ドル建ての借り入れコストの影響を受け始めている「炭鉱のカナリア」だ。新興国株の指標は、ワクチン接種の取り組みや景気刺激策の取り組みの遅れが懸念され、年初からの上昇幅を縮小している。

  国際決済銀行(BIS)の推定では、新興国のドル建て債務は4兆ドル強。米国債利回りの上昇で新興国の債務負担は増加し、これらの国の債務問題が他の市場に波及する恐れがあるとナッシュ氏は指摘する。

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