(ブルームバーグ): 東京五輪・パラリンピック組織委員会は、大会を契機に多様性の実現を目指し、世界に向け5月に「東京2020宣言」を出す方針だ。森喜朗前会長による女性蔑視発言を受けて設置されたジェンダー平等推進チームを中心に検討を進めている。

  宣言は、競技団体やスポンサー企業、大会ボランティアなど組織でも個人でも参加でき、それぞれが取り組み課題を選択できる形を想定。すでにスポンサー企業などと趣旨や理念について調整を行っている。 

 26日の理事会後に会見した組織委の武藤敏郎事務総長は、ジェンダー平等の分野で「日本が低い位置付けにあることを踏まえ、スポーツ界を超えて発信をしていくことは重要」との認識を示した。

  日本ではスポーツの祭典とされる五輪だが、国際的には「差別を容認しない」など五輪精神の浸透が開催意義の一つとして重視される。特に東京大会は、国際オリンピック委員会(IOC)がジェンダー平等の実現に向けた「25の提言」を2018年3月に公表して初めての開催となり、試金石の役割を担う。

  ところが、組織委トップの蔑視発言で、日本は男女格差を測るジェンダーギャップ指数(2020年)が156カ国中120位である現実が突き付けられた。IOCが意思決定層の女性比率を増やす目標を掲げる中、組織委の女性理事比率は20%にとどまっており、森氏の辞任後に女性12人を追加して42%に引き上げた。

  国内企業の女性管理職比率は前年比0.1ポイント上昇の7.8%と主要7か国で最下位。政府目標の30%を超える企業は7.5%にとどまっている。しかし、ジェンダー平等推進チームを率いる小谷実可子氏は、「五輪が与える影響は、オリンピアン(五輪出場経験者)として肌で知っている」と述べ、逆境を好機とする考えだ。 

  アーティスティックスイミング選手として活躍した小谷氏は、長野冬季五輪の前年の1997年に民間人として初めて国連総会に出席。開催期間中は米国によるイラク攻撃中止を求めてスピーチし、長野五輪開催中の停戦決議が全会一致で採択された実績を持つ。

  小谷氏は、宣言の検討のほか、橋本聖子会長が女性トップとして活躍する姿や、マイノリティーの視点を生かした大会運営を世界に示し、広く意識の向上につなげていきたい考えだ。

変化起こす「仕組み」必要

  1900年のパリ大会で初めて女性競技者が参加して以来、ジェンダー平等はIOCにとっても長年の課題だ。2000年のシドニー大会で38.2%だった女性競技者比率は東京大会で約49%まで上昇すると予想されている。一方、競技団体の女性役員比率を引き上げる取り組みは苦戦している。笹川スポーツ財団によると、国内中央競技団体の女性役員比率は約15%にとどまり、78団体のうち9団体では女性役員が一人もいない。

  IOCの25の提言は、スポーツ組織の役員選出プロセス見直しやメディアによる描写の在り方、スポンサー企業での女性管理職比率の検証など、ジェンダー平等実現に向けた具体的な手法を示している。

  組織委の理事でもある中京大学の來田亨子教授は、選手や種目の男女比率など目に見えるものだけなく、慣れ親しんだ人間関係の在り方を変える「仕組み」が必要と強調。企業も活用できる枠組みを作ることでビジネス界にも影響を与えることができると述べた。

  また、東京五輪・パラリンピック競技大会の開催後には、組織委がジェンダー平等実現のために割り当てた予算や、大会スポンサー企業での取り組みなどについて報告書を作成し、次の大会に引き継ぐべきだとの見方を示した。

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