(ブルームバーグ):

元日本銀行理事の早川英男東京財団政策研究所上席研究員は、日銀が3月の金融政策決定会合で上場投資信託(ETF)買い入れのさらなる柔軟化を決めたことで、黒田東彦総裁の下での金融政策の正常化は打ち止めになるとの見解を示した。

  早川氏は20日のインタビューで、黒田体制の8年間について、総括的検証を行ってイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を導入した2016年9月までの3年半とその後の4年半に分割できると説明した。検証以降は金融緩和や枠組みの強化と言いながらも、「実際にやってきたことは正常化だ」と語った。

  2%の物価安定目標自体を変えられない中、ETF買い入れの一段の弾力化は「とりあえずの正常化の終着点であり、できることはほぼやり尽くした」と指摘。23年4月の総裁任期満了まで「何もなければ何もしないということだろう」とし、経済情勢に大きな変化がなければ金融政策は動かないとみる。

  13年4月以降の大規模な資産買い入れは、YCC導入に伴い市場調節目標が量から金利に移行したことで国債購入は大きく減った。金融緩和の持続性や市場機能などの観点からETF購入が残る課題だったが、日銀は3月に政策点検を踏まえて年間12兆円の上限を維持する一方、原則の6兆円を撤廃した。

  ブルームバーグの調査では、エコノミストの40%は日銀が3月会合で実施した政策調整を「政策の正常化の一歩」とみている。

  20日の東京株式市場ではTOPIXが午前終値で1%超下げたが、日銀はETF買い入れを見送った。大幅な下落にもかかわらず、日銀がETFを購入しなかったのは16年以降で初めて。TOPIXが午前の取引で2.2%下げた21日は、701億円買い入れた。

  早川氏は物価目標は2%より低くてもよく、ゼロ%近辺でも問題はないと主張する。2%目標は経済悪化などには中央銀行が金融緩和で対応するのが重要との前提に立ち、利下げ余地を確保するためだと説明。コロナ禍では財政が大きな役割を果たしており、「いざとなったら財政を使えばいいということであれば金利の『のりしろ』は必要ない」と語った。

  3月会合では、マイナス金利の深掘りなど利下げの機動性を高めるため、金融仲介機能への副作用対策として「貸出促進付利制度」も導入された。早川氏は「ポーズにすぎない」とし、超低金利環境が続く限り金融機関の厳しい収益状況は変わらないとの見方を示した。

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