(ブルームバーグ):

ウォール街の銀行にはかねて、大口顧客と取引する際のリスクを制限する仕組みがある。セールス担当者が業務を獲得する一方で、多少の利益を犠牲にしてでもリスク管理担当者が厳しくチェックを入れるというものだ。

  クレディ・スイス・グループはスワップデスクのアルケゴス・キャピタル・マネジメント担当セールス要員を、プライムブローカー部門全体のリスク管理担当に任命した。事情に詳しい関係者が明らかにした。アルケゴスがスワップを使って積み上げたポジションは今年無残に破綻し、クレディ・スイスは取引相手銀行の中でも最大級の損失を被った。

  セールス担当からプライムサービスのリスク責任者となったパルシュ・シャー氏は、アルケゴスへのスワップ販売についてもその後のリスク管理についても不適切な行動を指摘されてはいない。アルケゴス事件後に退任した幹部に同氏も含まれていることを、今月の内部文書が示している。

  通常は前面に出ることのないリスク管理の機能が、クレディ・スイスが犯した2件のリスク管理失敗で注目を浴びることになった。ビル・フアン氏のファミリーオフィスであるアルケゴスに加え、同行は金融ベンチャーのグリーンシル・キャピタル絡みでも損失を被った。

  同行は22日の決算発表時に、アルケゴスについて詳細を明らかにする可能性が高い。広報担当のアナ・クリステンセン氏は、同行とシャー氏についてコメントを控えた。

  クレディ・スイスで20年以上勤めるシャー氏は、アルケゴスが事業を拡大し始めたころから同行との関係強化に貢献した1人だった。同氏はスワップデスクから異動になった時点でセールス担当としての役割を終え、プライムブローカー部門を監視する職務に就いた。新たな職務はアルケゴスを含む複数の顧客についてリスクを監視することだった。

  プライムブローカー部門のリスク管理グループは、クレディ・スイスのような大銀行が顧客との取引で巨額の損失を被ることがないように設けられた防衛ラインの一つだった。しかしエクスポージャーの大きさとポジション破綻の急激さにより、アルケゴス問題は同行の安全網をすり抜け、経営陣を困惑させ、従業員はいら立ち、投資家を激怒させた。

  同行のリスク管理方針は近年、今回退任することになった最高リスク責任者ララ・ワーナー氏を中心に形作られた。同氏はリスク管理担当者らに、銀行の資本を守ることだけでなく事業の戦略的優先課題も考慮するよう求めていたと、ブルームバーグが先に報じていた。

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