(ブルームバーグ): 新型コロナウイルス危機対応の米経済対策に伴う前例のない規模の政府支出でも、インフレが制御不能に陥る可能性は低い。複数の米金融当局者が5日、こうした見解を示した。

  連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長はCNBCテレビのインタビューで、「インフレ率がわれわれの長期的な目標である2%近辺で推移するというのがベースライン予測だが、警戒は怠らない」と述べた上で、「現在のデータは、経済活動の再開に伴って、ある程度の上向きの動きはあるだろうが、長期間は持続しないことを示唆している。それが私の見方でもある」と語った。

  他の当局者からも同様のコメントが相次いだ。これには金融政策についてハト派的な立場を長く取ってきたシカゴ連銀のエバンス総裁や、過去によりタカ派的なスタンスを示していたボストン連銀のローゼングレン総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁も含まれる。

  ルネサンス・マクロ・リサーチの米経済責任者、ニール・ダッタ氏は「タカ派が今やハト派になった」と電子メールで指摘した。

  米経済活動の再開に伴い、向こう数カ月間でインフレ率が高まる可能性があるが、これは一時的にとどまるとの見方が多い。金融当局者は物価上昇が投資家や一般国民の緊張感を高めないよう望んでいる。

  メスター総裁は「インフレがこれほど長く低水準にとどまってきたことを踏まえると、インフレ期待および実際のインフレ率がある程度高まることは歓迎される」と指摘。「今年見込まれるインフレ率上昇が、政策金利に関するわれわれのフォワードガイダンスを満たすのに必要な持続的上昇のようなものになるとは考えていない」と語った。同総裁はインフレ率が今年、米金融当局の目標である2%を上回った後、2022年には再びそれを下回る水準に下がると予想している。

  金融当局は先週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを0−0.25%、資産購入ペースを月額1200億ドル(約13兆1040億円)にそれぞれ据え置くことを決定。パウエルFRB議長はFOMC会合後の会見で、雇用とインフレの目標に向けて大きく前進するにはしばらくかかるとの見解を示した。

FOMC、景気の現状認識を上方修正−政策金利はゼロ付近で維持

  クラリダ氏は5日、債券購入のテーパリング(段階的縮小)の開始時期についてFOMCが内部協議を始める段階に「まだ至っていないことは確かだ」と述べた。

  ローゼングレン総裁も5日の講演後の質疑応答で、テーパリングに注目するのは時期尚早だと指摘した上で、年末までにそうした環境が整うことはあり得ると述べた。また、テーパリングについて考える際、考慮しなくてはならない点の一つが「住宅ローン担保証券(MBS)に対する米国債のテーパリングのスピードだろう」と述べた。

ボストン連銀総裁、住宅ローン市場はそれほどの支援を必要とせず

  ローゼングレン総裁はその後のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、米国の労働力と経済の進展状況を見極めるために「もう少し時間が必要」との認識を示した。

ボストン連銀総裁、経済の進展状況の見極めにもう少し時間必要

  ボウマンFRB理事は5日、3月にFOMCの経済予測が公表された時点の見通しよりも、景気回復がより迅速に前進したため、当時の予測の一部は古くなったように見えると指摘。ただ、経済見通しの改善でも、インフレ率が当局が目標とする2%を持続的に上回るリスクは「なお小さく見える」と述べた。

  エバンス総裁も5日のバーチャル形式の会合で、米国のインフレ状況が制御不能に陥る可能性について、「このシナリオが起きるリスクは極めて低い」と述べた。

  バイデン政権が打ち出している財政プログラムには共和党だけでなく、民主党系の一部エコノミストからも批判の声が出ているが、エバンス氏は一連の政府の支援措置によって「私の個人的な経済成長および失業率見通しは、わずか数カ月前と比べても格段に明るくなった」と述べた。

米シカゴ連銀総裁「テーパリングの議論、決して急いでいない」

Fed Hawks Join the Chorus Playing Down Worries On Inflation (2)(抜粋)

(ローゼングレン総裁のブルームバーグTVインタビュー発言を追加して更新します)

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