(ブルームバーグ): 中国人民銀行(中央銀行)の本店すぐ近くに中国華融資産管理が入る「華融タワー」がある。北京金融街のこのビルで午後9時過ぎ、書道をたしなむ華融会長の王占峰氏は1日の仕事を終えるとたびたび筆を握る。

  極めて悪質な汚職事件で有罪判決を受け死刑となった前会長の後を引き継いだのが、華融の共産党委員会書記も務める王氏だ。  

  書道を究めるには忍耐力と決意、技量、心の平静さが求められる。信用不安が拭えない国有の不良債権受け皿会社を率いる王氏(54)に今必要なのは、それ以上の手腕だ。華融が抱える問題は、債務に苦しむ中国の巨大金融システムにとっての試練であり、外国の銀行と投資家が注視する中で、官僚たちが解決策を探っている。

  文字通り中国金融界の中心に位置する1社が華融だ。人民銀のほか、華融の筆頭株主である財政省も近く、300メートル以内には中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)もある。華融は金融当局の指導下で進められた流動性支援で、中国工商銀行などの国有銀行から資金繰り支援を受けることで合意し、少なくとも8月末までの債務返済についてはめどが立った。

中国華融に国有銀行が流動性支援、8月までの債務返済にめど−関係者

  ただ華融が債券市場で借り入れた約410億ドル(約4兆4600億円)の債務をどのようにして返すかという問題は解決されていない。その大半は頼小民元死刑囚が会長だった時代に借り入れたものだ。

  そしてより大きな問題は、こうした全てのことが権限集中や数年にわたる高リスク債務抑制、金融界を整理するという、党総書記でもある習近平国家主席の取り組みと中国金融システムに何を示唆し得るのかということだ。

  北京大学のマイケル・ペティス教授(金融学)は、華融を救済すればリスクを無視する投資家行動を強めるが、一方でデフォルト(債務不履行)を容認し、債券市場の「無秩序」なリプライシングが続く事態となれば金融の安定を危険にさらすだろうと指摘している。

  華融タワー内で何が起きているかという質問に、公然と答えようという人はほとんどいないが、そこで働く人々やさまざまな当局者とのインタビューでその一端は垣間見える。  

  簡潔に言えば、華融は2020年の決算発表を遅らせてから、完全な危機モードにあり、株主の信頼を失っている。市場の地合いが悪化し、社債価格が安値を更新するたびに、同社幹部は当局からの呼び出しに備える。王氏および同氏のチームは毎週、業務と流動性に関する最新情報を書面で提供しなければならない。

  華融は公式発表文で、同社は健全であり、債務返済を果たすと繰り返し主張した。これらの文言は銀行監督当局から承認を得る必要があった。状況がどれほど深刻に捉えられているかと、最終的に誰が責任を負うかを示す1つのシグナルだ。

  財政省や他の金融当局との定期的な監査もある。華融のさまざまな事業を分離させる計画の可能性がたいてい議題になるという。こうした会合に詳しい関係者によれば、華融の幹部は待たされることが度々で、銀保監会トップクラスの当局者と会う機会は限られている。

  当局者によると、習主席の右腕である劉鶴副首相が率いる国務院金融安定発展委員会は華融の状況を巡る説明を求め、当局間の会合を調整している。ただ社債保有者に損失を負わせるかどうかを含めた長期的な解決策に関するやり取りはまだないという。

  人民銀と銀保監会、華融、財政省の担当者にコメントを求めたが、返答はなかった。

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