(ブルームバーグ): アリババグループの香港上場計画を当局が却下した数週間後の2013年10月だった。創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は「今はインターネットの時代だ」と宣言し、「もはや李嘉誠氏の時代ではない」と言い放った。

  香港経済界の超大物でCKハチソン・ホールディングス(長江和記実業)を創業した李氏を引き合いに出したこの発言は当時、多くの人々からひんしゅくを買ったが、今では馬氏が語ったことに異を唱える人はほとんどいないだろう。馬氏ら中国テクノロジー業界の大物と李氏のような香港実業界の重鎮らの資産の伸び方はここ数年間に大きく変わった。

  中国の習近平政権は馬氏らのような資産家の影響力抑制に動いているが、ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、中国の富豪上位10人の資産は16年以降に3倍に膨らみ計4250億ドル(約46兆2300億円)となった。香港のトップ10は2倍の2180億ドルだ。かつてアジア一の富豪だった李氏は現在13位で、馬氏に後れを取る。アリババは14年にニューヨークに、香港にも19年に上場した。

  資産面でのこうした変化は、不動産や港湾、インフラ、電気通信、航空、小売りなどを中心に企業帝国を築き上げてきた香港実業家の重要性が薄れ、政治的影響力も衰えつつあることを示している。金融センターとして香港が存続する未来も脅かされている。香港の成功を支えてきた「一国二制度」を中国共産党がなし崩しにしつつあるためだ。

  LWアセット・マネジメントの創業パートナー、アンディ・ウォン(黄燿宗)氏は「香港の大企業の主要事業はあまり成長していない。投資家は企業の価値よりも成長を重視する」と指摘。特に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後はテクノロジーがけん引するセクターに魅力があると述べた。  

  中国の資産家上位は、テンセント・ホールディングス(騰訊)の馬化騰(ポニー・マー)氏や動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者、張一鳴氏、ネットイース(網易)のウィリアム・ディン氏らだ。中国一の富豪は今、ボトルウオーターメーカー、農夫山泉を創業した鍾睒睒氏で、同氏の資産は690億ドル近くと、李氏の倍を超える。

  CKグループにコメントを求めたが、返答はなかった。

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