(ブルームバーグ): 新型コロナウイルスの感染拡大でブラジルが世界でも特に深刻な危機に陥っていた昨年8月、米ファイザーは開発中だったワクチン7000万回分の提供を申し出た。同国保健省からの返答はなく、ファイザーは再び打診した。さらに3度目の提案にも、音沙汰はなかった。

  かつてファイザーのブラジル事業を率いたカルロス・ムリーロ氏が9月に議会で述べたところによれば、同社の世界責任者はボルソナロ大統領に書面でワクチン提供を提案した。その書面は副大統領や首席補佐官、保健相、経済相、駐米大使にも同報送付されたという。

  それでも返事はなかった。

  ブラジルでは新型コロナに1600万人が感染し、45万人が死亡した。ここまで事態が深刻化した原因に、いまだにワクチンを接種せず、マスクも着けずに群衆の中に入っていくボルソナロ大統領が挙げられることは多い。議会の調査から浮かび上がりつつあるのは、大統領の怠慢だけでなく、製薬会社の交渉からサプライチェーン管理まで主要プロセスにおけるほぼ全てのレベルで政府が機能不全だったことだ。

  ブラジル全国のワクチン接種プログラムを長年率いた経験のあるカルラ・ドミンゲス氏は、「1日200万人にワクチンを接種できていたはずだった」と話した。「ブラジルが昨年、合意を結んでいれば、現在の米国や英国のように恵まれたな立場にいたはずだ」と指摘した。

  現実は、新型コロナ危機を抜け出しつつある国がある一方で、ブラジルではいまも1日に2000人が亡くなる。ワクチン接種は進みつつあるが、頼りとする国内のワクチン生産は原料不足で数週間ごとに停止するありさまだ。南半球には冬が近づき、ソーシャルディスタンス(社会的距離)が守られない中で、保健当局者はブラジルの感染第3波を警戒している。

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