(ブルームバーグ): テレワーク普及で将来に陰りが見えるオフィス不動産業界だが、その一角にはKKRやブラックストーン・グループといった投資家から資金を呼び込んでいる分野がある。

  リアル・キャピタル・アナリティクスによると、生命科学などの研究向け建物の取得額は今年これまでに100億ドル(約1兆1000億円)を超えた。これは5月までの世界商業用不動産取引の約4%に相当し、その比率は前年の2倍だ。

  ボストンやサンディエゴ、サンフランシスコなどの米都市ではビルの新設が進められているが、こうした推計は新たに建設中の物件を考慮していない。通常のオフィスに勤務する人と違って多くの研究者は在宅勤務をしない。新型コロナウイルスワクチンが景気回復を後押しする中で、医療のイノベーション(技術革新)に資金が流入し、特に米国や英国でより多くのスペースが必要になると見込まれる。

  ブラックストーンの米州不動産責任者ナディーム・メグジ氏はインタビューで「新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が需要の伸びを加速させたが、こうした流れは今後何年も続くだろう」とした上で、「創薬や生物学の進展に加え、高齢化に関連するニーズの高まりが影響する」と指摘した。

  昨年は社会的距離の確保でオフィス利用が低迷し、商業施設・ホテル投資への関心が失われたが、生命科学に関連する建物の販売や借り換えは約250億ドルと、2019年の約90億ドルから急増した。イーストディル・セキュアードが示した。

  この分野に以前から投資しているブラックストーンは、米最大の生命科学オフィスビル民間オーナー、バイオメッド・リアルティ・トラストの借り換えで65億ドルの利益を計上したほか、昨年12月には研究施設で構成するポートフォリオを34億ドルで取得することで合意した。

  一方、ドロップボックスが17年にビル全体をリースしたが、テレワーク普及で利用を放棄したサンフランシスコのオフィスビルについて、KKRは今年3月に約11億ドルで取得した。同社はこの建物を生命科学のテナント向けに転用する計画だ。

  英国ではドイツ銀行のロンドン本社が予定されていたロンドン・カナリーワーフ地区の不動産が、科学向けのキャンパスとなる計画だ。不動産サービス会社ジョーンズ・ラング・ラサールによると、英生命科学市場の取引件数はこの3年間に2.66倍に増えた。

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