(ブルームバーグ): 温室効果ガス排出ゼロに向けて進む商船三井は、2021年中に脱炭素化への移行を資金使途とするトランジションローンで数百億円規模を調達する方針だ。

  梅村尚チーフフィナンシャルオフィサー(CFO)は10日のインタビューで、国内での液化天然ガス(LNG)燃料フェリーや、アジアと欧州でのLNG燃料供給船を建造するための資金をトランジションローンで調達して「充てるべく検討している」と述べた。

  トランジションローンは同じ海運業の川崎汽船が3月に国内で初めて実施したばかり。まだ事例が少なく、普及のために経済産業省は金融庁、環境省と5月に「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」をまとめ、活用を検討する企業が参照できる産業分野別のロードマップ策定に向けてモデル事業の公募を始めた。

  商船三井は応募を検討しており、梅村氏は経産省の動きも踏まえつつローンを「12月くらいまでには実行したい」考えだ。

  50年までの脱炭素を目標としている商船三井は、月内にも達成に向けたロードマップを公表する。経営計画「ローリングプラン2021」では23年度までの3年間で低・脱炭素事業に総額2000億円を投じる方針を示している。

商船三井、50年温室効果ガス排出実質ゼロ目指す−海運にも脱炭素の波

  商船三井はこれまで、ESG(環境・社会・企業統治)債として環境債(グリーンボンド)と環境・社会貢献債(サステナビリティーボンド)を発行した。ただ、資金使途を明確にするだけではなく、脱炭素に向けた会社全体の取り組みも織り込んでいかないと「ファイナンス、特にボンド関係はなかなかうまくとれない時代になりつつある」と梅村氏は話し、市場の見方が厳しくなっていると感じている。

  海運会社は事業の構造上、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量が大きい。こうした業界だからこそ、将来資金調達に苦戦しないようにトランジションファイナンスには「積極的に取り組んでいく必要がある」と同氏。資金繰りや市場環境などを見極めながら、まだ国内での発行実績がないトランジションボンドも「個人向けを含めて考えていきたい」と語った。

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