(ブルームバーグ): 梶山弘志経産相は11日の閣議後会見で、昨年の東芝の定時株主総会運営が経済産業省の関与もあり不当な影響を受けたと結論付けた弁護士の調査報告書について、規制当局として企業やその株主に接する場合もあり、「こうした対応が直ちに問題になるとは考えていない」との見解を示した。

  梶山経産相は、外為法に基づく対内直接投資管理については、貿易管理部と事業所管部局が連携して行っており、執行に当たっては国の安全などを確保する観点から「規制対象となる株主を審査する上で事業者から情報を得ることもある」と説明した。

  同氏は「東芝のガバナンス(企業統治)に関すること、まずは同社の今後の対応に関する検討を待ちたい」とも発言。「どういう事実があって断定に至ったのか必ずしも明らかでない」とし、東芝側の対応を待った上で必要に応じて経産省でも確認を進めたい考えを示した。

  また、報告書が米ハーバード大学の基金に議決権を行使しないよう当時経産省参与だった水野弘道氏に東芝が事実上交渉を依頼したと指摘したことについては、「水野元参与からアドバイスをもらったことはある」としたものの、経産省から水野氏に何らかの「依頼をした事実はない」と述べた。

  筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが選任した弁護士が10日に発表した報告書によると、東芝は昨年の株主総会でのアクティビスト(物言う株主)への対応について、経産省に支援を要請。外為法に基づく権限発動の可能性などを背景に、一部株主の議決権行使を妨げるなど不当な影響を与えていたと認定した。

東芝は「不当な影響」で議決権妨げようと画策−経産省関与も

  企業統治に詳しい郷原信郎弁護士は、東芝の車谷暢昭社長(当時)の地位を維持するために経産省が加担した構図が報告書で明らかになり、「とんでもない問題だ」と指摘。同省が介入することで「海外の投資家が当然の権利を行使できなくなる」とすれば、日本市場が「まともに相手にされなくなってしまう」と懸念を示した。

  東芝は今回の調査結果の内容を慎重に検討の上、対応などを後日開示する予定だ。

  加藤勝信官房長官は11日の会見で、調査報告は東芝のガバナンスに関することだと指摘し、「今後の東芝の対応を注視するとともに、経産省においてそれを踏まえた必要な対応がなされるものと承知している」と述べた。

  加藤氏はまた、車谷氏が菅義偉官房長官(当時、現首相)との朝食会に出席し、「株主総会に関する課題」を説明したと推認されるとの調査報告について、「菅首相は全く承知をしていない、そのようなことはないと発言されたと承知している。それに尽きるところだ」と話した。

  東芝株は11日の取引で下落して始まり、一時前日比1.8%安の4635円と5月31日(1.9%安)以来の日中下落率となった。終値は1.6%安の4645円だった。

  SMBC日興証券の吉積和孝アナリストは10日付リポートで、今月25日に開催される定時株主総会で、今回の調査結果や東芝の対応方針を踏まえ、株主が取締役選任決議でガバナンスがより機能する体制への転換を促す可能性があると指摘した。

  吉積氏は修正動議などで取締役体制に重要な変更があった場合、現在複数のファンドが検討している東芝への株式公開買い付け(TOB)提案への対応方針に影響を与えることも考えられ、「一概にネガティブとは言い切れない」としている。

  今月の定時株主総会を巡り、米議決権行使助言会社のグラスルイスが会社側提案の取締役候補者13人のうち5人について反対を推奨したことが11日分かったと日本経済新聞が報じた。対象はいずれも社外取締役で、取締役会議長の永山治氏や監査委員長の太田順司氏らだという。

(議決権行使助言会社の動きを追加して更新します。東芝の株価を訂正済みです)

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