(ブルームバーグ): 銀行のコスト負担となっている税金処理業務の効率化に政府が乗り出す。総務省はQRコードを通じて地方税を納められるよう規格を整備する。低金利環境下で構造改革を進める銀行に対し、政府や自治体が合理化に向けた対応を迫られた形だ。

  銀行が自治体に代わり住民税や固定資産税などの支払窓口となる収納代行業務については、2018年3月に関係機関が勉強会を設置して効率化を検討してきた。議論を踏まえ、総務省では納付書に記載するQRコードの規格を30日までに決定するとしている。23年度からはスマートフォン(スマホ)などでの納税手続きが可能となる。

  収納代行業務は、新規顧客と接点を作り預金量を確保したい銀行にとってメリットがあった。しかし、約1700ある自治体や地方公共団体の納付書様式が異なることから、デジタル技術を活用できずコスト増を招いている。自動車税や固定資産税の納入が集中する5月には、緊急事態宣言下の地域でも職員が出勤し、手作業で納付書の印鑑確認や振り分け作業に追われていた。

  全国銀行協会の3月の調査では、収納にかかる1件当たりコストの平均が401円だったのに対し、自治体などからの徴収手数料は同8.88円。収納代行による金融機関側のコストは年間で約622億円に及ぶ。

  全銀協の三毛兼承会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ会長)は同月の定例会見で、税や公金収納業務では自治体内部のIT(情報技術)化支援を行いながら、収納に関する事務取扱手数料の「適正な対価を求めていくことも考えられる」と述べていた。三菱UFJ銀行は3月、18都府県の194自治体について税公金の収納業務を終了している。

議論進めるタイミング

  アドバイザリー会社セレントの柳川英一郎シニアアナリストは、納付書へのQRコード記載は「紙媒体を前提にしたプロセスであり、コスト構造は抜本的に変わるわけではない」と指摘。一方、自治体側も納税者の利便性を重視するようになってきており、税金徴収の在り方など抜本的な議論を進めることで対症療法にとどまらず改善を進める必要があると述べた。

  政府は9月のデジタル庁創設を前に重点計画をまとめるなど、行政サービスのデジタル化を加速させている。しかし、16年に運用を開始したマイナンバーカードの普及や健康保険証、在留カードとの一体化などの取り組みは遅れており、新型コロナウイルスの休業支援金給付やワクチン接種券交付でも手作業による遅滞が生じている。

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