(ブルームバーグ): 投資家の間でリフレトレードを巻き戻す動きが広がっている。中央銀行が景気支援の継続を示唆する中で債券相場は上昇を続け、株価は下落。新型コロナウイルスの変異株は経済再開への見通しを暗くしている。

  米連邦準備制度理事会(FRB)が7日公表した議事要旨によれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は6月会合で債券購入プログラムのテーパリング(段階的縮小)について話し合っていた。それでも米国債市場では30年債利回りが2月以来の1.90%割れとなった。欧州中央銀行(ECB)と中国人民銀行の金融緩和姿勢も長期化するとの見方から、ドイツと中国の10年債利回りは大きく低下した。

  ECBは8日、1年半に及んだ戦略点検の結果としてインフレ目標の引き上げを発表した。

  みずほインターナショナルのマルチ資産戦略責任者、ピーター・チャットウェル氏は「債券投資家にとっては当面、明らかに強気な結果が示され、さらにハト派的な中銀の反応関数を反映させていくことになる」と分析。「ECBが新たな枠組みを構築するのは根本的に、インフレを加速させていくことが必要だからだ」と説明した。

  債券相場の上昇は、投資家の間のインフレ高進懸念がピークにあったほんの数カ月前とは様変わりだ。当時は米国債利回りの2%突破が目前に迫っている様相を呈していたが、今ではその半分を若干上回る水準にある。物価上昇を一過性のものとみる米金融当局の主張を裏付ける形だ。

  一方、ECBの戦略点検の結果は、より長期間にわたって緩和姿勢を維持する意向を示唆するものと市場の一部で受け止められ、債券市場で強気のセンチメントを後押しした。ただ、ECBのインフレ目標に対するアプローチが一部の予想ほどは積極的ではなかったとの見方から、ユーロは8日に対ドルで一時1ユーロ=1.1868ドルに上昇した。

  このほか、中国は中銀による追加の景気支援の必要性を示唆して、一段と大きな転換の可能性をほのめかしており、テーパリングを議論する米金融当局との違いが鮮明となっている。

  8日のドイツ10年債利回りは一時4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下のマイナス0.34%となり、フランス10年債利回りも0%近辺で推移した。

  同日のストックス欧州600指数を見ると、景気循環株とバリュー株の不振が目立った。成長・回復の鈍化で打撃を受ける恐れがあるセクターが売られ、鉱山株や銀行株、自動車メーカー株がいずれも2%を超える下落となった。

  コムディレクト銀行のストラテジスト、アンドレアス・リプコウ氏は「リスクが増しており、今年上期の良好なパフォーマンスを踏まえ、投資家の間では神経質なムードが広がっている。一連のネガティブなニュースは手に余る状態となりつつある」と語った。

  他方で、UBSグローバル・ウェルスマネジメントのストラテジストは、債券利回り低下と景気循環銘柄売却の動きが先行き反転する可能性を指摘。マーク・ヘーフェル最高投資責任者(CIO)氏率いるストラテジストは最新の経済指標について、成長鈍化というよりも供給の混乱を示すものだとの分析を示した。

  外国為替市場では今月に入り、安全を求める動きに主要10通貨の中で円やスイス・フランが対ドルで上昇している。

  パドライク・ガービー氏らINGグループのストラテジストはリポートで、「マクロの見通しが引き下げられ、夏前で市場流動性が枯渇しつつある最悪の局面で現在のポジション解消が進んでいるように見受けられる。価格動向はリフレ取引がさらに剝げ落ちる状況を示唆している」とコメントした。

(8日の欧州株や為替動向などを加えて更新します)

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