(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)は中期的な物価目標の「2%」への変更を決め、米連邦準備制度と同じ方向に一歩進んだ格好だが、景気回復後に経済の上振れを容認する同様のコミットメントには踏み込まなかった。

  ECBは8日、戦略点検後の新たなアプローチについて「インフレが一時的に目標を適度に上回る期間を容認する可能性がある」としたが、目標を下回る時期の後、インフレ率の一時的なオーバーシュートを目指すという連邦準備制度の明確なコミットメントとの違いがはっきりした。

  ラガルド総裁は記者会見で、「連邦準備制度のような平均インフレ目標をわれわれが導入するかとの質問への答えはノーだ。非常にはっきりしている」と語った。

  極めて低い水準にあるため、中銀の政策手段が尽きる危険があるのではと懸念される政策金利については、「実質的な下限に対応する多くの手段が存在する」と発言。新たな「対称な」インフレ目標は、物価見通しへの低い期待が定着しないよう経済ショックの下で「特に強力で粘り強い」ECBの対応を発動させることにつながると説明した。

  ECBは、過度な物価圧力が主に懸念された時代に考案され、定義も曖昧だった「2%を下回るがそれに近い」という従来の物価安定の目安を変更した。一方、連邦準備制度はインフレ率が長期的に平均2%になることを目指す政策運営方針を昨年決定した。過去の目標未達を埋め合わせる形で、景気が上向く時期に物価上昇率をオーバーシュートさせるというものだ。

  INGのエコノミスト、カルステン・ブルゼスキ氏(フランクフルト在勤)は、二つの中銀の姿勢の違いは「重要」だと指摘し、「米国の方がより思い切った金融政策が期待できる」との見方を示した。

  インフレ目標変更は緩和的金融政策のさらなる長期化を示唆するが、当局者は公式インフレ指標が現時点で反映していない持ち家コストにより注意を払うとしている。

  これがインフレ率を0.1−0.2ポイント前後押し上げる結果、変更の影響が相殺される可能性があるとブルームバーグ・エコノミクス(BE)は予想している。

  連邦準備制度の平均インフレ目標を巡っては、ドイツ連邦銀行のワイトマン総裁が、インフレ率が目標を上回る状況で金融政策を引き締めなければ、債務を抱える政府の要求に応じる印象を与えかねないと主張。ECBのシュナーベル理事もインフレ率は予想を上回るペースで加速しかねず、その場合「必要だけ迅速に利上げが実際可能かどうか」疑わしいと述べた。

  BEは「政策委員会は連邦準備制度の例に倣って平均インフレ目標を採用することを差し控えた。言い換えれば、ECBは過去の低インフレを埋め合わせる目的でインフレ率が目標を当面上回る状況を目指さないということだ」と分析した。

(BEの分析を追加して更新します)

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