(ブルームバーグ): BNPパリバ証券の元取締役でMCPジャパン・ホールディングスの岡沢恭弥社長(51)は1000億円規模のファンドを組成し、九州地方でESG(環境・社会・ガバナンス)を重視するスタートアップ企業や中小企業などに投資する計画を明らかにした。

  岡沢氏は8日のインタビューで、早ければ11月にも国内外の資産運用会社や銀行、生保などから資金を調達して1号ファンドを設立し、今後5年間で環境を守るためのグリーンテクノロジー分野の企業に出資していく考えだと話した。将来的には海外からの資金も呼び込み、2000億−3000億円規模への拡大を目指すという。

  同氏は太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの活用が盛り上がる九州に注目している。水俣(みなまた)病や土砂災害など環境問題を克服した歴史のある九州では、クリーンなエネルギー利用への意識が高いという。

  岡沢氏は「国際金融アンバサダー」の役割を福岡市から担っており、同市への国際金融機能の誘致を推進しながら、九州大学や自治体と連携して投資案件を発掘する方針だ。既に100社を超す九州の非上場企業を訪問したという。

  日本サステナブル投資フォーラムが取りまとめたデータによると、国内のサステナブル投資残高は2020年3月末時点で310兆円と16年比で5.5倍に拡大した。それでも米国の投資額を大きく下回っており、発展途上にある。

  岡沢氏が投資先の一つとして注目するのが宮崎県延岡市にある鏡山牧場だ。同牧場では、黒毛和牛を放牧して牧草だけを食べさせながら育てているために肉質は赤身肉で、穀物中心の飼料を与えながら運動させずに育てた牛の霜降り肉と比べると脂肪分は少ない。脂肪分の多寡が評価基準の一つとなっている肉質等級は決して高くないと明かす。

  岡沢氏は「牛にも人生があり、散歩してほしいし長く生きてほしい」とし「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を重要視していると話した。経済合理性と逆行することがあっても社会的責任を追求することが必要で、健康志向の強い中国からの引き合いもあることなどから、鏡山牧場への出資を検討していると述べた。

  このほか、土石流など自然災害が増加していることから、石炭火力発電所で発生した石炭灰を土壌改良や堤防を造る際の資材として活用する技術を持つ熊本県の企業などにも出資を検討している。

  岡沢氏は、第1号の投資先について具体的な社名について言及しなかったが、農産物や畜産物などを中国や東南アジアに輸出する福岡県内の企業に年内に出資する考えだと明かした。

  MCP親会社で香港拠点のMCPアセット・マネジメントの運用資産残高は約5700億円で、ファンド・オブ・ファンズではアジア最大級。岡沢氏は6月にBNPパリバの取締役を退任し、7月1日付で新設された日本法人の統括責任者に就任した。

  スーツに革靴ではなく、長靴を履き農場経営者を訪れるスタイルに様変わりした同氏にとって、困難も多いという。九州の経営者は「思いが同じでないとなかなか投資させてくれない」と現地での事業の難しさを語った。

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