(ブルームバーグ):

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は14日、下院金融委員会の公聴会で金融政策に関する半期に一度の証言を行い、インフレ率が予想より速いペースで上昇していることを認める一方で、米経済への積極的な支援策を縮小するのは時期尚早と述べた。

  議長は連邦公開市場委員会(FOMC)について、「委員会は6月の会合で、昨年12月に当局が資産購入に関するガイダンスを採用して以来、経済が当局の目標に向けてどのように進展しているかについて議論した」とし、「『一段と顕著な進展』の基準到達にはなお程遠いものの、進展は継続すると参加者はみている」と説明した。

  バーチャル形式で開かれた3時間に及ぶ公聴会で議長は民主、共和両党の議員から物価上昇を巡る質問を浴びせられた。米金融当局による月額1200億ドル(約13兆円)の米国債・住宅ローン担保証券(MBS)購入と事実上のゼロ金利政策がインフレをあおっているとの批判がある。

  議長は当局が高インフレを一時的と予想しながらも、インフレが持続的だと判明し2%目標を著しく上回る場合には対応すると強調。「当局のガイダンスや枠組みには適切な時期に正しいことを行うことを妨げるものは何もない」と語った。

  15日の上院銀行委員会での証言で議長はさらに質問を受ける見通し。

  TDセキュリティーズのグローバル金利戦略責任者プリヤ・ミスラ氏は、パウエル議長は「金融当局が出口に関する圧力を感じている、もしくは近いうちにテーパリングに踏み切ることを決めたといった見方を押し返そうとしている」と分析。「労働市場回復の道のりは長いと議長は指摘した」と述べた。

  共和党議員は議長に、金融政策が物価上昇要因とされる供給上の制約をどう緩和できるかや、当局の債券購入が金融市場をゆがめているかどうかについて説明を求めた。

  これに対し議長は、失業給付の上乗せが今後数カ月で失効するのに伴い、労働力供給が増加するかどうか注視していくと述べ、必要であれば現在の不足状態や賃金・物価への影響を静観する意向を表明。「実際にそのような供給があっても、最大限の雇用になお届かない可能性はまだある」とし、「こうした理由から当局は、今が利上げのタイミングだとは見ていない」と説明した。

  議長証言を受けた14日の米金融市場では、米10年国債利回りが1.35%付近に低下。米株式相場は最高値付近で終了した。

強い需要

  インフレについて議長は、「生産のボトルネックなど供給面の制約で生産が限定されている業種で強い需要が見られ、それが一部の財とサービスに特に急速な物価上昇をもたらしている。だがそうした物価上昇は、ボトルネックの影響が解消されるのに伴い一部反転するだろう」と指摘。「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で大きな打撃を受けたサービス分野の価格もここ数カ月に上昇している。経済活動の再開とともにそうしたサービスへの需要が急増しているためだ」とした。

  パウエル議長は資産価格とリスク選好の高まりにも言及したが、金融市場に端を発する経済への短期的なリスクについては重大視しない考えを示した。

  議長は「家計のバランスシートは、ならしてみると極めて力強く、企業のレバレッジは高い水準から低下してきており、金融システムの中核となる機関は引き続き強靱(きょうじん)だ」と指摘した。

  インフレ期待に関しては、「中長期のインフレ期待に関する指標はパンデミックの間に記録した低水準から上昇しており、FOMCが掲げる中長期のインフレ目標とおおむね整合するレンジにある」と説明した。

  与野党議員は議長に対し、物価上昇や、こうした上昇は持続しないとする金融当局の評価について質問した。議長はインフレの最近の数値が「予想や期待を上回っている」が、財・サービスの少数の品目が上昇の最大の部分を占めると強調。その上で、高インフレが持続し、インフレ期待を変えかねない場合は、「当局はもちろん、政策を必要に応じ変更する」と話した。

  議長は「労働市場の状況は改善が続いているが、まだ長い道のりが残っている」とし、回復完了にはまだ程遠いとの認識をあらためて示した。その上で、「公衆衛生の状況が引き続き改善し、現在雇用に重しとなっているパンデミック関連の要素の一部が後退するにつれて、雇用の伸びは向こう数カ月に力強いものとなるだろう」と述べた。

Powell Says Achieving ‘Substantial Further Progress’ a Ways Off(抜粋)

(議長発言を追加して更新します)

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