(ブルームバーグ): 日本銀行が16日の金融政策決定会合で金融機関の気候変動対応投融資を支援する新たな資金供給制度(気候変動対応オペ)の骨子案を決めたことについて、債券市場ではグリーンボンド(環境債)をはじめとするESG(環境、社会、企業統治)ファイナンス市場の拡大につながると評価する声が聞かれる。

  「グリーンボンド」「サステナビリティーリンク」「トランジション」のキーワードが明記されたことは「サステナブルファイナンス市場に大きなインパクト」。みずほ証券の香月康伸SDGsプライマリーアナリストはこう指摘し、これまで投資対象として意識してこなかった金融機関が投資を検討し始める契機になり「投資家層が広がることは発行市場にもプラス」との見方を示した。

  日銀は気候変動対応オペで、グリーンボンドとローン、環境や社会的目標の達成状況で利率などが変わるサステナビリティー・リンク・ボンド(SLB)とローン、脱炭素移行への取り組みを支援するトランジションファイナンスに係る投融資を対象に、利率ゼロ%で貸し付ける。当座預金への付利による優遇措置では貸出促進付利制度の中で最も低い0%を適用。それでも金融機関のマイナス金利の負担は軽くなる。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の池崎陽大共同キャピタル・マーケッツ・グループ長は、日銀が脱炭素へのバックファイナンスで一歩踏み出した意味は大きいとし、「ESGファイナンス市場への発展に寄与する」とみる。

  国内の一般債市場でESG債の発行は増えており、ブルームバーグのデータによると、2021年度は7月16日までに3000億円近い環境債が起債された。前年同期間より約2割多い。SLBは5例目の発行が6月にあり、トランジションボンドは日本郵船が第1号を今月21日に起債する予定だ。

  海外では気候変動対策により踏み込む中央銀行もある。イングランド銀行(英中銀)は社債購入プログラムに気候問題への配慮を反映させる方針で、欧州中央銀行(ECB)も気候変動を今後の金融政策運営の中で考慮するとしている。

  みずほ証の香月氏は、中銀の取り組みには金融政策のほか外貨準備などの運用、融資支援、ストレステストなどのアプローチがあるとした上で、「どれがベストな選択かはコンセンサスがない」と指摘。日本の債券市場でグリーンQE(量的緩和)などを実施するのは「かえって需給をゆがめる結果」になりかねないとし、「今回の方針は現実的だと考える」とコメントした。

  一方、大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリストは、日銀が環境債投資を後押しすることで、非環境債よりも割高になる「グリーニアム」が生じる事態は「決して市場から歓迎されるものではない」との見方だ。日銀はまず、金融システムを脅かす気候変動のリスクの所在と影響を詳細に調査・分析し、投資が必要な分野を明確にして資金使途を広げる政策が望ましいと話した。

  BNPパリバ証券の中空麻奈チーフESGストラテジストは、気候変動オペ導入は「小さいけれど大きな一歩」だとした上で、資金を供給する以上、日銀として気候変動やグリーンファイナンスとは何か「定義があってしかるべき」だと考えている。企業の情報開示も重視することで「グリーンウオッシュをなくす方向に持っていってもらいたい」と言う。

  中空氏は、50年の二酸化炭素排出実質ゼロを達成するために「必要なサステナブルファイナンス市場はどれくらいかを想定し、それから逆算して必要な分を考えていかないといけない」とも指摘。日銀には今後、市場拡大が十分でないと判断したら付利の水準を「拡大してほしい」と語った。

(第9、10段落にコメントを追加しました)

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