(ブルームバーグ): 中国のテクノロジー企業は過去20年にわたり、友好的な規制環境と世界有数の急成長国への投資を望む膨大な資本プールを背景に米株式市場に進出してきた。

  計2兆ドル(約220兆円)規模の企業数百社の背後にあったそうした巨大な力は今や消滅しそうだ。

  中国当局は10日、海外上場を目指すほぼ全ての企業にサイバーセキュリティー審査を義務付ける新たなルールを発表。中国勢の米国での新規株式公開(IPO)にとって終わりの前兆に等しいと長年の業界ウオッチャーは指摘する。

  北京大学光華管理学院のポール・ギリス教授は「恐らく、重複上場している大企業数社を除いて、5−10年後に米上場の中国企業が存在する公算は小さい」と述べた。

  中国の配車サービス会社、滴滴グローバルは当局の延期要請にもかかわらず、ニューヨーク上場を推し進めることを決定。これに端を発する当局による締め付け強化の影響は既に市場全体に広がりつつある。

  米上場の中国株の指標は最近の高値から約30%下落。まだ上場していない企業の投資家にとって、資金を取り戻せる時期を巡る不確実性が強まっている。中国企業が自国により近く政治的にもより安全な代替上場先を求める中で、ウォール街の企業が魅力的な引受手数料を失う一方、香港は恩恵を受けることになりそうだ。

  香港への重複上場は増えたものの、中国企業は数カ月ではなく数週間でIPO申請手続きが完了するニューヨークを依然として選好している。中国の厳格な資本規制は、同国の取引所がテクノロジー企業のバリュエーションの高さや流動性の面でニューヨークに太刀打ちできないことを意味する。中国企業は今年だけでも米国での初の株式公開を通じて130億ドルを調達している。

  海外IPOを規制する中国政府の動きは、同国のテクノロジー企業に対する監督強化と一致。そうした企業の多くがその分野でほぼ独占的で、ユーザー情報の膨大なプールを持つ。習近平国家主席はテクノロジー企業をコントロールする資産家の影響を抑制しようとしており、同業界への規制強化の取り組みはこの数カ月で加速している。

  既に米国に上場している中国企業が今後どうなるかは、主に変動持ち分事業体(VIE)を巡る中国当局の方針にかかっている。ただ、企業が海外での上場を廃止し、構造転換して再上場するのは、コストが高く何年もかかるプロセスで、完全に禁止される可能性は低い。

  一方、香港はますます実行可能な代替上場先となりつつあるようだ。ブルームバーグの先週の報道によれば、中国は国外IPOに義務付けるサイバーセキュリティー規制当局への承認申請について、香港上場の場合は免除する方針だ。

  いずれにせよ、中国で最も成功した強力な民間企業が米上場に沸いた20年間のブームは終わりに近づいているようだ。中国政府からのメッセージは明白だ。それは共産党がIPOを含むほぼ全てについて最終決定権を持つということだ。

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