(ブルームバーグ): 日本製鉄が取引先自動車部品メーカーの少なくとも1社に対して、特殊鋼製品の値上げと供給量の削減を要請したことが分かった。

  ブルームバーグは21日までに、日本製鉄から自動車部品メーカー宛てに先月出された「極秘」扱いの文書を入手。それによると、今年10月出荷分から直近の納入実績の月平均を基準として一定比率の供給量削減を要請している。

  さらに、別途価格改定についても要請。値上げに合意できない場合は、追加措置として供給カットの幅を拡大し、合計で最大3割の削減を実施すると通知した。

  事情に詳しい1人の関係者は公式に話す権限がないとして匿名を条件に文書の内容を確認。日本製鉄は個別の取引についてはコメントを差し控える、と電子メールで回答した。大手鉄鋼メーカーによる供給量の削減要請は異例だ。今後の展開次第では、半導体不足などの影響を受ける自動車メーカー各社の製品供給力が一段と低下する可能性もある。

  日本製鉄は昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた減産対応で国内の高炉のうち、6基を一時停止した。夏ごろから自動車向けの需要が急激に回復した一方、鉄鋼生産に必要な鉄鉱石や石炭価格は大幅に上昇。同社は今回の文書の中で、足元でも鋼材需給は極めてタイトで国内外の一部顧客の受注を断っている状況が続いているとし、供給削減への理解を求めている。

  日本製鉄の森高弘副社長は6月のインタビューで、「日本の鋼材価格は国際的にみて非常に陥没している」と指摘。早期の改善が必要であり、「値上げが受け入れられなければ、やがて安定供給できなくなる」と述べ、海外の競合企業と対等な立場で競争できる環境にすべきだと訴えていた。

日本製鉄副社長、鋼材価格の是正待ったなしー広がる格差と募る危機感

  自動車メーカーはコロナ禍以降の販売急回復の過程で半導体や樹脂製品の不足に直面し、生産の中止と再開を繰り返している。今後、鉄鋼関連製品でも供給不安が生じれば、業績回復に向けての新たなリスク要因となりそうだ。

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