(ブルームバーグ): 反トラスト法(独占禁止法)の執行強化を新たに目指す動きが米政権に広がる中、大型M&A(企業の合併・買収)の実現が既に厳しくなりつつある。

  世界的な大手保険ブローカーの米エーオンは26日、300億ドル(約3兆3070億円)で計画していた同業の英ウィリス・タワーズ・ワトソン買収を取りやめた。米司法省が反対していたことが背景にあり、業界再編につながる取引は今後、波乱含みとなる可能性が示唆された。

エーオン、300億ドルのウィリス買収断念−競争問題で当局説得できず

  司法省は声明で、買収が実現していれば保険ブローカー業界の大手企業が3社から2社に減っていただろうと指摘。ガーランド司法長官は声明で「これは競争と米ビジネス、最終的には米国の顧客、従業員、退職者にとっての勝利だ」とコメントした。

  M&Aブームは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)がピークを越えた昨年下期に始まったが、エーオンの買収断念のニュースは、このブームに対する大きな脅威と言えそうだ。

  バイデン米大統領は今月、航空手荷物料金から処方薬の価格急騰までさまざまな分野を対象とする幅広い取り組みに連邦政府の権限を行使する大統領令を発令。国内で支配的な存在感を示す企業に対決する姿勢を鮮明にした。

バイデン氏、競争促す大統領令に署名−資本主義の「核心」回復へ

  先月には下院司法委員会が大手ハイテク企業を抑制し、デジタル市場の競争を促す法案パッケージの一部として、アマゾン・ドット・コムなどに対し一部事業からの撤退を強制できるようにする反トラスト法案を承認した。

  さらにバイデン大統領は、反トラストの分野で厳しい姿勢を示す人物を政権の重要ポストに指名した。

  司法省反トラスト局と連邦取引委員会(FTC)の新トップ2人は、反トラスト法の行政執行機関であるこれら組織に進歩的な観点をもたらすと、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の反トラスト訴訟専門アナリスト、ジェニファー・リー氏は指摘。「彼らは反トラスト法の執行が緩過ぎると懸念し、厳格化の必要があると表明してきた人々だ。新たな法制化抜きに、まずてこ入れできる分野の一つはディールの精査だ」と語った。

  ブルームバーグ集計データによると、今四半期に入って撤回に至った全世界のM&A案件は1490億ドル相当と、今年これまでに取りやめとなった規模(4460億ドル)の約3分の1に達している。

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