(ブルームバーグ): 日本の新型コロナワクチン接種は欧米先進国からの出遅れを取り戻しつつあり、数週間以内に現在の米国の水準である5割に到達する見通しだ。度重なる緊急事態宣言が回復の妨げとなっている日本経済にとって朗報となる。

  日本国内では16日時点で人口の37.6%が2回のワクチン接種を済ませている。ブルームバーグの試算によると、1日当たりの接種は過去30日平均で140万回。現行ペースがこのまま続けば、接種率は22日にも菅義偉首相が今月末に目指していた4割を超える。9月12日までに51%と現在の米国並みとなり、10月末には8割に達する。

  菅首相は17日、8月末に国民の半数近く、9月末には6割近くが2回のワクチン接種を終えるとの見通しを示した。10月初旬までに全対象者の8割に接種できる量のワクチンを配分するとも語った。接種の進ちょくで感染拡大が抑制されれば、緊急事態宣言に伴う行動制限の緩和によって景気回復の時期が早まる可能性もある。

  大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、足元の感染拡大が収まり、10月末時点で全国民の8割が接種を完了すれば、「サービス消費が回復に向かうことが可能となる」と述べた。政府の観光支援事業「GoToトラベル」などの再開も視野に入り、10−12月期には明確なプラス成長に転じるとみている。

  外出自粛要請の続く日本は、経済回復も出遅れている。国際通貨基金(IMF)は世界経済見通し(WEO)で、今年の実質成長率を米国と英国は7%と高く見込む一方、日本は3.3%から2.8%に引き下げた。

  米アップルの移動傾向リポートによると、ニューヨークやロンドンの居住者の活動レベルは、日本を大きく上回る。政府は17日、感染力が強いデルタ株による感染拡大を受けて、東京都など6都府県に対する緊急事態宣言を9月12日まで延長し、京都や福岡など7府県も対象に追加した。消費者の姿勢が一段と慎重になる恐れもある。

  第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、「デルタ株が出る前であれば、個人消費や景気の回復の鍵はワクチン接種率だった」と指摘。デルタ変異株の急速な流行により、「感染者数の増加だけでコロナを怖がらないような国民の意識の変化が、本格回復の新たな条件になってしまった」と述べた。

  ワクチン接種の進展にもハードルが待ち受ける。国立神経精神医学センターの調査では、「ワクチンを打ちたくない」と答えた人は全体の11.3%。15〜39歳は14−15%台、65〜79歳では4−7%台と、未接種の多い若年層でワクチンを忌避する傾向がみられた。

  世界保健機関(WHO)事務局長上級顧問を務め、現在は福島県相馬市の新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンター長の渋谷健司氏は、「コロナは深刻な病気ではないと考える若い人々にとって、より強く表れる副反応はワクチン接種をちゅうちょさせる」とし、接種率は60%に達すると停滞が始まると警告する。

  渋谷氏は、若者へのワクチン接種を進めるため、「ワクチンを受けるための社会的インセンティブが必要」との見解を示した。具体的には、イベントやコンサート、パブの入場の際に、ワクチンパスポートとPCR検査の陰性証明書を提示することを提案した。

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