(ブルームバーグ):

自民党総裁選は、再選を目指す菅義偉首相に対抗し、岸田文雄前政調会長(岸田派)が出馬する見通しだ。党内には支持率が低い首相を総選挙の「顔」とすることに不満もあり、各派閥の支持を得る駆け引きが活発化しそうだ。総裁選の日程は26日に決定する。

  NHKによれば、岸田氏は立候補の意向を固めた。出馬に意欲を見せる高市早苗前総務相(無派閥)や下村博文政調会長(細田派)、野田聖子幹事長代行(無派閥)は立候補に必要な推薦人が集められるか不透明だ。

  二階俊博幹事長(二階派)は24日の記者会見で菅首相の再選支持は「当然のことだ」と述べ、派閥としての支持を表明。共同通信によると森山裕国対委員長(石原派)も首相支持を明言した。

  菅首相は再選に向け「時期が来れば出馬は当然」との考えを示しているものの、主要派閥が雪崩を打って支持をした前回とは様相が異なる。新型コロナウイルスの感染急拡大で政権への批判が高まり、内閣支持率は政権運営が困難な「危険水域」といわれる30%を割り込んだ。横浜市長選で首相が支援した前閣僚が敗北したことも打撃となった。 

  SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは、「安倍一強」の恩恵で当選した選挙基盤の弱い若手議員の間からは「人気の高い首相を望む」声があると指摘。ただ支持率に最も影響を与えているのは感染状況であり、感染者数が減少すれば「総裁が誰になっても衆院選の時には支持率は上がっているだろう」との見方を示した。 

  自民党では異例の無派閥から選出された菅首相は、昨年の総裁選では二階派や細田派、麻生派など党内5派閥の支援を受けた。無派閥議員グループも加わり、岸田氏と石破茂元幹事長に大差をつけて勝利した。

  選挙は、衆参両院議長を除く383人の国会議員票と党員・党友による地方票の合計で争われる。立候補には国会議員20人の推薦が必要。派閥の領袖はいずれもベテランの男性議員で、過去に総裁選に出馬した女性議員は小池百合子東京都知事だけだ。

1.細田派 97人(安倍前首相を含む)

  安倍晋三前首相の出身派閥。党内最大で、官房長官や党幹事長を歴任した細田博之衆院議員が会長を務める。安倍氏は首相時代は派閥を離脱していたが、最近は活動を活発化させており、5月には菅首相支持を表明した。派内では、西村康稔経済再生担当相や下村氏、萩生田光一文部科学相、稲田朋美元防衛相らが将来の総裁候補としてしのぎを削る。 

2.麻生派 53人

  麻生太郎副総理兼財務相が会長を務める。次期総裁候補に挙げられる河野太郎行政改革担当相は20日の記者会見で「今の仕事をしっかりやりたい」と述べ、総裁選への言及は避けている。甘利明税調会長は、安倍氏、麻生氏とともに「3A」と称し半導体議連を立ち上げるなど党内で存在感を示す。

3.竹下派 52人

  会長の竹下亘元総務会長が政界引退を表明しており、後継の行方が注目されている。茂木敏充外相や加藤勝信官房長官、かつて派閥を率いた小渕恵三元首相の娘・小渕優子元経済産業相が後継候補と目されている。  

4.二階派 47人

  在任期間が歴代最長5年超となった二階幹事長が率いる。二階氏は昨年の総裁選で菅首相への支持を最初に表明し、政権発足の立役者となった。野党出身者も積極的に受け入れ、昨年は民主党政権で防衛副大臣を務めた長島昭久衆院議員も加わった。衆院選の公認を巡り、他派閥と摩擦も起きている。

5.岸田派 46人

  会長を務める岸田氏は、昨年の総裁選で敗れた後も、再挑戦への意欲をにじませてきた。4月に実施された地元・参院広島選挙区の再選挙の陣頭指揮を執ったが、敗北に終わった。「ポスト菅」として痛手を負ったものの、6月には安倍氏、麻生両氏を最高顧問に迎え「格差是正」をテーマにした議員連盟を設立し、独自色をアピールした。 

6.石破派 17人(1人休会中) 

  世論調査で次期総裁候補として上位に名前が挙がる石破氏は、ブログで「感染急拡大の最中に、次の総裁選挙に名乗りをあげると表明されることには個人的に違和感を覚える」とつづり、出馬を見送る意向を示した。安倍前首相時代には政権運営を厳しく批判したが昨年の総裁選で最下位となり、会長を辞任。その後、退会や休会が相次ぎ、自派閥だけでは推薦人20人に届かない。田村憲久厚労相が所属している。

7.石原派 10人

  石原伸晃元幹事長が率いる。党内7派のうちの最小勢力ながら、昨年は森山国対委員長が二階氏とともに菅政権誕生を主導した。

8.無派閥議員 61人

  小泉進次郎環境相は菅首相を支持すると明言。坂井学官房副長官ら無派閥の中堅・若手議員も「菅グループ」として首相を支える。高市氏や野田氏も無派閥で、総裁選出馬には推薦人確保が課題だ。

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