(ブルームバーグ): ラッカー元リッチモンド連銀総裁は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はインフレが手に負えなくなるリスクを抱えていると指摘。金融当局はインフレを抑制できるとの自信をパウエル議長は示しているものの、そのためには長い間傷を残すような荒療治が必要になることをしっかり伝えていないと述べた。

  ラッカー氏は30日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「金融当局は困難な状況に置かれていると私は思う」とし、「このインフレ高進で当局が抱える危険は、それが根強く続くことだ。6カ月ベースのインフレは1983年以降に見られたものを上回っている」と語った。

  パウエル議長は最近のインフレ率上昇について、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を経た米経済活動再開に関連した混乱を反映しており、一過性のものにとどまる可能性が高いと説明している。

  現在バージニア・コモンウェルス大学で教授を務めるラッカー氏は、パウエル議長が27日、カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で講演した際、インフレ高進が根強く続いた場合には金融当局として対応する手段があると述べたことを前向きに評価した。

  その上で、ただそれは「あなたの脚に壊疽(えそ)した部分があるが処置する器具があるから心配はいらない、ただそれは切断するための器具一式で大型ののこぎりも含まれる、と医者から言われるようなものだ」と述べた。

  ラッカー氏は13年間のリッチモンド連銀総裁時代、最もタカ派な金融当局者の一人で、より引き締め的な政策を主張し、連邦公開市場委員会(FOMC)の決定に反対票を投じることも少なくなかった。同氏は自身の見解について、過去の高インフレ時の経験から学んだものだと説明した。

  ラッカー氏は「1980年代初めにインフレ率を低下させるべく取り組んだが、それには極めて大きな痛みを伴った。よって、そうした経験を持つ当局者は時とともにより予防的な政策を主張するようになった」とした上で、「金融当局は戦略に関して昨年発表した文書で、そうした予防的政策から遠ざかってしまった」と述べた。ラッカー氏が言う文書とは、パウエル議長が2020年8月のジャクソンホール会合で明らかにした新たな政策の枠組みを指している。

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