(ブルームバーグ): 新型コロナウイルス禍だけでは不十分とでも言うように、世界の市場には中国当局の締め付けという予測不能な要因が新たに加わった。こうした異例の時期における最善の投資方法とはどのようなものだろうか。

  ブルームバーグ・ニュースは計3兆ドル(約330兆円)の運用資産を持つ機関投資家を対象に、不透明な回復と中国の規制強化が引き起こした経済の混乱をどう乗り切ろうとしているかを取材した。

  アクティブ運用への期待からヘッジファンド投資に前向きな投資家もいれば、米中の規制面の対立を避けて、インドなどの割安銘柄に乗り換える投資家もいる。

  各社の戦略の一端を以下に挙げる。

テマセク・ホールディングス:

  シンガポールの政府系投資会社テマセクは向こう1年にわたり、デジタル化と電子商取引、サイバーセキュリティー、サステナビリティー(持続可能性)の向上に重点を置く企業に目を向けていくと投資グループ共同責任者のナギ・ハミイエ氏は表明。最後の項目は、より環境に優しいポートフォリオ作りを目指す投資家が増える中での動きだ。

  いずれも完全に目新しいものではない。テマセクも同業他社も何年にもわたってこのようなテーマに数十億ドルもの資金を注ぎ込んできた。しかし、完全に織り込み済みと一部で考えられている分野でなお成長の余地があるとハミイエ氏はみている。

  テマセクは中国について長期的に強気姿勢を維持しており、中国投資はポートフォリオの27%を占める。 ハミイエ氏がブルームバーグの取材を受けた7月半ばは、中国当局による規制強化の動きのさなかだった。配車サービスの滴滴グローバルの株価が急落。その後、オンライン教育各社への締め付けが強まり、米証券当局との緊張も再び高まっている。

  それでもハミイエ氏は中国企業について、米市場にアクセスできなかったとしても、時間とともにバリュエーションが上昇するとの楽観的な見通しを示した。

GIC:

  シンガポールの政府系投資会社GICも中国についてポジティブだと林昭傑(リム・チョウ・キアト)最高経営責任者(CEO)が明らかにした。中国のコロナ禍への対応などを理由に挙げている。

  林氏は「特に、いわゆる先進国市場のバリュエーションと比べると、中国資産のエントリーポイントの水準は引き続き良好だ」と述べた。

  ジェフリー・ジェンスバキ最高投資責任者(CIO)は、GICは中国に根付き、上海のチームが不動産ディールを模索し、北京のチームはプライベートエクイティー(未公開株、PE)関連の好機をうかがっていると説明。GICはサステナビリティーとテクノロジーに注力している企業を掘り下げて検討していると同氏は語った。

  中国と米国、欧州連合(EU)の規制圧力が市場にボラティリティーをもたらし、GICにとって買いの好機が生じている。中国企業が米市場に上場できなければ、香港やシンガポールなど他の取引所が「力強い」代替上場先になると同氏はみている。

フューチャー・ファンド:

  オーストラリアの政府系ファンド(SWF)、フューチャー・ファンドは豪中間の緊張が高まる中、中国から撤退したとピーター・コステロ会長が語った。

  同会長は記者団との電話会議で、「政府に指示されたからとか、そういったことではなく、状況の厳しさを踏まえ、ソブリンマネーを慎重に扱う必要があると考えた」と説明した。

  一方、ラファエル・アーントCEOは経済情勢について、持続的なインフレ上昇に向けた準備が整っていると指摘。そうなれば、金利が事実上ゼロであることを考えると、リターンにとって「極めて大きな打撃になる」と述べた。

  同ファンドはバリューとクオリティー型戦略に基づく投資配分の方法を検討しており、風力発電のティルト・リニューアブルズの株式とテルストラの携帯電話の中継塔を最近取得した。

ピクテ・ウェルス・マネジメント:

  ピクテ・ウェルス・マネジメントのセサル・ペレス・ルイスCIOは中国市場について依然としてポジティブだが、より高いリスクプレミアムを適用することなどを投資家に勧めている。

  同氏は「6年ぶりにオルタナティブ投資にポジティブになっており、ヘッジファンドもその一つだ」と指摘した。

DWSアジア・パシフィック:

  香港に本拠を置くDWSアジア・パシフィックのショーン・テーラーCIOは、選別されたインドの上場IT(情報技術)サービス企業に投資する機は熟したと語る。こうした企業は欧米市場の顧客が多いことから、収益を国内消費にそれほど依存しておらず、ロックダウン(都市封鎖)による影響も少ない。

  さらに同氏は「極めて割安であるため、中国・米国勢との比較で再評価している。インドの一段の回復を予想しており、金融などへの配分を増やす見通しだ」と説明した。

 

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