(ブルームバーグ): 米国の非農業部門雇用者数は8月、過去7カ月で最も少ない増加にとどまった。市場予想も大幅に下回り、米金融当局が年内に緩和策縮小を開始するかどうかの判断を難しくさせる内容となった。

  雇用ペースの急減速は、新型コロナウイルスのデルタ変異株の急速な拡大への懸念と、採用難の両方を反映している公算が大きい。

  デルタ変異株の感染拡大はすでに消費活動を抑制しており、対面方式での授業再開や企業のオフィス復帰計画の妨げにもなっている。こうした状況で雇用主は採用に一段と慎重になり、一部労働者が他人との接触機会の多い仕事を敬遠している可能性がある。

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  娯楽・ホスピタリティー業界の雇用者数は前月比横ばい。レストラン・バーの雇用者が4万2000人減となった。小売業、建設業、政府機関、ヘルスケア関連の雇用も減少した。

  一方で、製造業の雇用者数は3万7000人増加。自動車工場での大幅増を反映する形となった。

テーパリング判断に影響も

  米金融当局者らは債券購入のテーパリング(段階的縮小)の開始時期を判断する材料として、雇用統計の重要性を強調してきた。予想外の急減速となった8月統計は、テーパリング時期を巡る金融当局のデータ重視姿勢を強めることになる。

  雇用者数はコロナ禍前の水準をなお530万人下回っている。労働参加率は前月と変わらずの61.7%。子どもの世話が必要という問題やコロナ懸念が依然影響していることが示唆された。

  エコノミストの多くは以前、9月にはこうした要因の影響が和らぐとの見方を示していた。ただ、猛威を振るうデルタ変異株により、そうした時間軸は後ずれしている。

  デルタ株が労働市場の回復を妨げている中でも、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は8月27日の講演で「最大限の雇用に向けた継続的な進展の見通しは良好だ」と強調していた。

パウエル議長、テーパリングを年内に開始し得る−利上げは急がず (2)

  パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン氏は顧客向けリポートで「デルタ変異株の感染拡大前には、秋には100万人を超える雇用者増が見込まれていたが、それは今や非常に難しくなっている。労働市場の状況がここまで不透明な中、パウエル議長がテーパリングを急かされることはないだろう」と記した。

  飲食店や小売店から製造業や建設業に至るまで、多くの業種で人員の確保は大きな課題となっている。その結果、アマゾン・ドット・コムなどの企業は人材を引き寄せるべく、賃上げや一時金支給などに動いている。

  平均時給は8月に前月比で0.6%増加。市場予想(0.3%増)の2倍の伸びとなったが、これは低賃金労働者の多い業界での雇用者数減少といった同月の雇用構成を反映したものとみられる。週平均労働時間は34.7時間で前月と変わらずだった。

  人種別の失業率は、黒人が8.8%に上昇した以外は全てで低下。子どもがいる可能性の最も高いグループである25歳から54歳までの女性の労働参加率は低下した。

  統計の詳細は表をご覧ください。

(統計の詳細やエコノミストのコメントなどを追加して更新します)

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