(ブルームバーグ): 大学・学生用住宅物件を扱う米アメリカン・キャンパス・コミュニティーズは、5月に10億ドル(約1100億円)規模のサステナビリティー連動型のクレジットライン契約を結んだ。エネルギー効率改善や従業員と取締役の多様性など環境、社会、ガバナンス(ESG)関連目標に借り入れコストを連動させる同社初の取り組みだと、幹部はプレスリリースで自賛した。

  明記されていないのは、このローンに組み込まれている目標達成へのインセンティブがほぼ無意味だということだ。アメリカン・キャンパス・コミュニティーズはESG目標を達成できなくても追加コストに直面することはなく、達成できた場合に節約できる金利は0.01%、つまり100万ドルを借り入れても年間100ドルにとどまる。

  そして、ESGローンの世界ではこれが例外ではないことが分かった。

 

  ブルームバーグが2018年以降に米国で設定されたサステナビリティー連動の回転信用枠とタームローン計70件余りを分析したところ、4分の1以上がアメリカン・キャンパス・コミュニティーズのクレジットラインと同様の条件だった。つまり目標未達の罰則はなく、達成での金利節約は微々たるものだ。同様の借り入れについて発表しているジェットブルー・エアウェイズとプルデンシャル・ファイナンシャルは、ローンの詳細の開示を拒んだ。

  米企業のESG取り組みに対する監視の目が厳しくなるに伴い、見た目を整えるためにウォール街に頼る企業が増えている。しかし批判的な向きによれば、コミットメントと成果の両方について過度に素晴らしいたイメージを提示しているものが多い。銀行ローンはESGファイナンスへの最も容易な道の一つだが、高い成果を目指すものではないことが分かる。

  サステナブル投資に特化した運用会社として最大手の1社、インパックス・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ピーター・シュワブ氏はサステナビリティー連動ローンについて、「誠実ではない」として、「実際には実質的な経済的影響はなく、一部の企業がなぜわざわざ利用するのか分からない」と話した。

 

 

  サステナビリティー連動ローンは比較的新しい形態で、世界的に最近活発化しているグリーンボンドとは異なる。特定のESG目標の達成と金利を連動させることに企業は合意するが、資金の使途は制限されない。米国では今年約930億ドルが設定され、2020年通年の130億ドルの7倍に上るものの、ブルームバーグのデータによれば年初来で約1兆5000億ドルに上る米シンジケートローンのほんの一部にすぎない。

  一部の業界ウォッチャーは市場が拡大するに伴い、経済的インセンティブがより意味のあるものになることを期待している。ESG目標達成のための幅広いツールの一つとして活用している企業もあるが、企業が最小限の努力でESGの取り組みを宣伝する手段になっているように見受けられるケースもある。

 

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