(ブルームバーグ): 新型コロナウイルスと関連のあるコロナウイルスを持つ動物からの感染例が中国と東南アジアで毎年、数十万件に達していることが、研究で分かった。動物から人への感染が起源となるパンデミック(世界的大流行)の脅威がこれからも続くことを浮き彫りにしている。

  米エコヘルス・アライアンスとデューク・シンガポール国立大学医学部の研究者が専門家の査読と発表に先立ち9日公表した論文によると、動物から人への感染例は年平均で40万件に上る。軽症や無症状、あるいは人と人との間で容易に感染しないことで大半は認識されないが、感染は常に、新型コロナのような感染拡大につながり得るウイルス適応の機会を伴う。

  新型コロナウイルスがどこでどのように出現したかという問題が激しい論争を巻き起こしている。ウイルスを研究する中国・武漢の研究所から流出したと主張する要人もいるが、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が支援する新たな研究は、コウモリが新型コロナなどのウイルスの主な自然宿主で、そのねぐら近くの住人は特に影響を受けやすいことを示す証拠が土台になっている。

  シドニー大学の進化生物学者、エドワード・ホームズ氏は「新型コロナなどに関連するウイルスについてコウモリから人への感染頻度を推計する初の試みだろう」と指摘。人は常にコウモリのコロナウイルスにさらされているとした上で、「一定の条件が整えば、このうちの1つが最終的に感染拡大につながることがあり得る」と論じた。同氏は今回の研究に参加していない。

  面積が米テキサス州の6倍余りに相当するアジアの一部地域にはコロナウイルスに感染している可能性のあるコウモリが24種近く生息。中国南部やミャンマー、ラオス、ベトナム、インドネシアの各国の一部が最もリスクの高い地域とみなされている。 

  エコヘルス・アライアンスのピーター・ダザック氏らは中国や南アジア、東南アジアでの未報告のコウモリから人への感染例の割合などを推計するため、コウモリの分布モデルと生態学・疫学データを活用。東南アジアでコウモリから人への感染例は年5万件(中央値)と推測している。

  ホームズ氏は自然界で動物のウイルスにさらされるリスクは「研究所よりはるかに高い」と指摘。「今回はコウモリだけだ。考えられるあらゆる『仲介』の動物種を考慮すれば、エクスポージャーのリスクはさらに高くなる」と強調した。

  研究によると、こうした動物にはミンク、ジャコウネコ、タヌキのほか、アジアで食料や毛皮の用途で広く飼育・取引される他の哺乳類が含まれる。2016年には中国だけで野生動物の飼育に1400万人が従事していたという。

  今回のアプローチは野生動物から人への感染に関する体系的なリスク評価に加え、野生生物や家畜、人の優先的な監視対象となり得る重要な地域を特定する戦略を検証するものだと、研究者は説明した。

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