(ブルームバーグ): 自民党総裁選(17日告示、29日投開票)について、ブルームバーグがエコノミストを対象に実施した調査では、75%が河野太郎行政改革担当相の勝利を予想した。河野氏が首相になった場合、日本銀行の黒田東彦総裁の後任人事などを含めて金融政策の修正が模索される可能性を指摘する声も出ている。

  15日時点で岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野氏の3人が出馬を表明している。10−15日に行った調査では、エコノミスト36人のうち次期首相に河野氏が就任するとの予想が27人に上った。岸田氏は6人。高市氏との回答はなかった。

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  経済政策を巡っては、高市氏がアベノミクスの継承・発展を提唱。一方、岸田氏は規制緩和・構造改革で生じた格差の是正を訴え、河野氏も個人をより重視する経済を目指す考えを示し、アベノミクス路線とはやや距離を置く。新型コロナウイルス感染症対応を中心とした経済対策の実施には全員が意欲的だ。

  新政権の財政・金融政策に対するスタンスは、新型コロナの影響が続く中で、当面は大規模な財政支出と金融緩和を継続せざるを得ない、というのがエコノミストの一致した見方だ。財政支出規模の予想は30兆円が中央値で、過半が新規国債の発行を財源に見込む。金融政策への影響は、84%が首相に誰がなっても金融政策運営に大きな影響は出ないと予想し、14%は判断が難しいと回答した。

  オックスフォード・エコノミクスの長井滋人在日代表は、総裁選の結果にかかわらず、イールドカーブコントロール(YCC)政策に伴う財政の発動余地や資産買い入れによる市場安定の確保に加え、「アベノミクスの明確な否定も政治的に難しいため、正常化を急がせる可能性も極めて小さい」とみている。

金融政策への影響

  ただ、河野氏の首相就任なら、アベノミクス路線の修正が始まるとの見方も少なくない。党の行革推進本部長だった2017年に金融政策に関する提言をまとめ、日銀は早い段階で異次元緩和からの出口戦略を市場と共有すべきだと主張した。10日の出馬会見では、2%の物価安定目標の実現は「かなり厳しい」との認識を示した。

  ソシエテ・ジェネラル証券の剱崎仁調査部長は、河野氏の場合、「政府からの日銀に対する緩和圧力は低下し、日銀は現在の金融緩和策を大きく変更することはなかったとしても、一段と柔軟な運営を行う可能性がある。一方、気候変動対応への関与を強める可能性が考えられる」とみる。

  23年4月には黒田総裁が任期満了を迎える。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、河野氏はインフレターゲットの有効性に懐疑的だとし、「政府・日銀の共同声明が見直され、23年には金融システムへの弊害が大きな政策の修正を可能とする日銀首脳人事が行われる可能性がある」と指摘する。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「河野氏の場合は、常に改革志向をアピールする必要があるため、意外な人物を起用して日銀の政策に可能な修正を加える、例えば政府・日銀共同声明の字句修正を模索することもあり得る」との見方を示す。

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