(ブルームバーグ): 自民党は29日の総裁選で、岸田文雄前政調会長を新総裁に選出した。10月4日召集の臨時国会で第100代首相に指名される。

  決選投票で河野太郎行政改革担当相を破った。党員を含めた1回目の投票でもトップだった。午後6時から記者会見する。

  岸田氏は当選後のあいさつで、「数十兆円規模の経済対策を年末までにしっかりと作り上げなければならない」と述べた。総裁選で掲げた新しい資本主義や自由で開かれたインド太平洋の実現、少子化対策も課題に挙げた。

 

  岸田氏は昨年の総裁選で菅義偉首相に大差で敗れ、2度目の出馬だった。告示日の17日には、敗北後の1年間で多くの国民の声を聞いてきたとした上で「今の時代が求めているリーダーは私だ」と訴えた。選挙戦では、自身が率いる岸田派が結束し、最大派閥の細田派や麻生派のベテラン議員らの支持も受けた。 

  新型コロナウイルスの影響が続く今は非常時と捉え、財政出動や金融緩和を継続する考えだ。首相就任後は、数十兆円規模の経済対策を速やかに実施すると表明している。

  経済政策では小泉純一郎政権以降の新自由主義からの転換を掲げ、中間層への分配を重視し格差是正を目指す。金融所得課税の見直しに取り組む考えで、株の売却益や配当金などで利益を得ている富裕層ほど所得税の負担率が下がる傾向にある「1億円の壁打破」を主張している。

挫折乗り越え変化

  岸田氏は1993年の衆院選で初当選。安倍晋三政権で外相を2012年から4年8カ月務めた。15年には慰安婦問題について日韓で合意。16年には、現職の米国大統領として初めて広島を訪問したオバマ氏を安倍氏とともに迎えた。被爆地の広島市中心部を含む広島1区選出で、「核軍縮」をライフワークとする。自民党内の穏健派と位置付けられている派閥「宏池会」を率いている。

  一年前の総裁選で大敗した岸田氏だが、当時との変化を感じる議員が多い。投票前に行われた決起大会では、選対本部長を務める遠藤利明元五輪相が「人の気持ちを動かす政治家に変わった」と評価。甘利明税調会長も「挫折という経験を通じて、強くたくましくなってわれわれの前に帰ってきた」と語った。

  推薦人代表の鈴木俊一前総務会長は「今回の総裁選はこの後にすぐ衆院選を控えており、人気者投票のような感じもあった」と指摘。ただ討論会を重ねる中で、実現可能な公約を作っているのは岸田氏との評価が議員の間で広がったと話した。

(自民党議員の発言を追加します)

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