(ブルームバーグ): 29日投開票の自民党総裁選を経て10月4日に国会で選出される新首相は、新型コロナ禍の長期化で低迷している日本経済の再生に向けて、さまざまな課題に直面することになる。

  河野太郎行政改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4候補は、コロナ対応を中心に大規模な経済対策の必要性をそろって主張している。間近に控える衆院選で有権者の支持を得るため、新首相の下でも当面は景気刺激的な財政政策と金融政策のポリシーミックスが続く見通しだ。

金融政策

  インフレ懸念が台頭する米欧ではコロナ対応の金融政策の手じまいが始まりつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は11月にも債券購入プログラムのテーパリング(段階的縮小)を開始する可能性に言及した。一方、日本銀行が掲げる2%の物価安定目標の実現には程遠く、正常化は当面、議論になりにくい。

  金融政策運営を巡っては、自民党総裁選での各候補による論戦や過去の発言から、2%物価目標に対する考え方に温度差が見られている。コロナの影響が収束していく局面では、新政権による金融政策への関与の度合いに違いが出てきそうだ。

  2%の早期実現を目指して拡張的な財政・金融政策を続けるのか、大規模緩和の副作用を重視して早期実現にはこだわらないのか、新政権の姿勢次第で日銀の政策運営に変化が生じる可能性もある。政府と日銀の政策連携に関する共同声明の扱いや、2023年4月に任期満了となる黒田東彦総裁の後任人事が試金石となる。

財政再建

  コロナ対応で悪化した財政の再建も課題となる。日本では社会保障費や債務の償還・利払い費に国家予算の半分以上を費やしている。少子高齢化に伴う社会保障費の伸びに対応して消費税率を10%まで引き上げたが、金融危機や自然災害、感染症の大流行など経済的ショックが加わるたびに赤字国債に頼る財政構造が続いている。

  財政規律の目安となる基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は20年以上赤字が続き、21年度当初予算では20兆円超の赤字。25年度とする黒字化目標の達成時期の再検証も予定されている。コロナ対応で膨らんだ今年度予算の公債依存度は4割超で、債務残高は国内総生産(GDP)の2倍を超える水準が続いている。

  世界的に突出した財政不均衡の中でも、日銀が大規模緩和を続ける限り、金利上昇は抑制される。高市氏は自国通貨建ての国債は債務不履行(デフォルト)にならないと主張し、2%物価目標の達成までPB黒字化目標の凍結を主張。河野氏は、財政悪化で日本円に対する信認が弱まれば円安が進み、輸入物価の値上がりなどで国内でインフレが起きると懸念を示す。

成長戦略

  菅義偉政権はデジタル化とグリーン化を成長戦略の柱に掲げる。コロナ感染拡大の過程で露呈した行政のデジタル化の遅れに対処するため、IT施策を一元化するデジタル庁を1年足らずで9月に新設した。「書面、押印、対面」を原則とした制度や慣行の抜本的見直しなど規制改革にも着手している。

  グリーン化では、菅首相が昨年10月の所信表明演説で、50年に温室効果ガス排出を実質ゼロにする脱炭素社会の実現を宣言。今年4月の気候変動サミットでは、30年度に13年度比46%削減を目指す方針を表明した。

  脱炭素化に向けた方針は、産業界や与党内にも根強い反対意見がある中、菅首相がリーダーシップを発揮して決定した経緯がある。新政権が菅氏が敷いた路線の下でどうかじ取りしていくのか注目される。

少子高齢化

  日本は世界一の超高齢社会。総人口1億2521万人に占める65歳以上の高齢者は3638万人と3割弱に達する。コロナに見舞われた20年度の出生数は84万人と1899年の統計開始以降の最低を記録した。高齢化に伴う生産年齢の減少は、労働力不足や経済成長の鈍化、医療費の上昇を招き、財政構造の悪化にもつながった。

  4人の候補者とも少子化対策に予算を振り向ける意向を示しているが、少子化対策が日本の成長力を底上げする効果の発揮には長い期間がかかる。野田氏は日本経済新聞とのインタビューで、1億人の人口を維持するために移民政策を推進する考えを示している。

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