(ブルームバーグ): 自民党総裁選(29日投開票)では、経済・軍事両面で台頭する中国との向き合い方について候補者の方針に違いが出ている。強硬姿勢を見せる高市早苗前総務相に対しては、中国側が警戒感を強めている。

  高市氏は20日、台湾の蔡英文総統とオンラインで会談し動画投稿サイト・ユーチューブで公開した。動画内では安全保障分野も含めた協力の必要性があると訴え、中国が警戒する台湾との連携を強調。台湾が参加を表明した環太平洋連携協定(TPP)加盟も支援する考えを示した。

  米国の中距離ミサイルの日本への配備に関しても、高市氏は唯一「日本を守るために必要だ」と表明。長距離ミサイルであれば「中国ほぼ全土の航空基地に対して効果がある」と強い姿勢を隠さない。首相在任中の靖国神社参拝も、25日のオンライン討論会でただ一人明言した。

  中国・清華大学の劉江永教授は「高市氏は日中関係に損害を与え、東アジアに不安定さをもたらす可能性が最も高い」と指摘し、「正しい歴史認識を欠く右派政治家だ」と警戒する。

  ただ総裁選では、党内の保守派に訴えるため、候補が中国への強い姿勢を訴えるのは珍しくない。2012年には、安倍晋三氏が尖閣諸島の実効支配を強化するための避難港創設を公約に掲げたが、首相在任期間中には実現しなかった。

高市氏と対極の野田氏

  対中政策で高市氏と対極にあるのが、対話路線を強調する野田聖子幹事長代行だ。

  中国のTPP加盟について17日の記者会見で「世界の経済の安定のためには前向きに検討するべきことだ」と4候補の中で最も友好的な姿勢を見せた。台湾有事の可能性が議論された18日の討論会でも「平和主義」の立場を強調し、米中対立を抑止するために「日本がカギになる」と語った。

  日中は来年に国交正常化50周年を迎え、経済的な結びつきも強い。一方で香港の統制強化やウイグル族への人権侵害で中国に対する国際社会の懸念は高まり、海警局に武器使用を認めたことも尖閣諸島周辺で中国と対峙(たいじ)する日本にとって不安材料となった。菅義偉首相は22日のインタビューで、中国は「わが国の平和と繁栄にとってのリスクになる可能性がある」と述べた。

対抗と対話のバランス

  安倍政権下でともに外相、防衛相を務めた岸田文雄前政調会長と河野太郎行政改革担当相は、中国への対抗姿勢と対話継続のバランスを取る。

  2012年から4年8カ月外相を務めた岸田氏は、要人同士の会談で関係を動かしてきた経験から、中国とも対話を継続するべきとの立場だ。ただ今後の日本外交では「台湾海峡問題は大きな課題となってくる」との認識を示しており、米中対立の最前線に位置する日本は、民主主義や法の支配、人権といった「基本的な価値観を守る覚悟」を示す必要があると表明した。

  岸田氏が率いる「宏池会」は大平正芳元首相ら歴代領袖(りょうしゅう)が中国との関係発展に取り組んできたが、3日のインタビューでは「時代はずいぶん変わった」と明言。権威主義的な動きに懸念を示した上で「現実的な観点から中国との距離感を考えていく」と述べ、派閥の親中派イメージからの脱却を狙った。

  河野氏は先月発売の著書で、中国の軍事活動に対抗するため米国やアジア諸国による「同盟組織」を検討することを打ち出した。防衛相時代には、中国に対抗する米英など5カ国の機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」との連携にも意欲をみせた。

  一方で外相時代には中国外務省の華春瑩報道局長と笑顔のツーショット写真をツイッターに投稿し、インターネット上で賛否が分かれた。18日の討論会では、日中関係は安全保障だけではなく「重層的な関係の中で中国に対してしたたかに外交を繰り広げていかないとならない」と指摘。「首脳会談は定期的にやっていくべきだ」と話し、対話の重要性も語った。

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