(ブルームバーグ): 新型コロナウイルスのデルタ変異株は人類に、ウイルスと共存する方法を再考させた。強い感染力に対しても耐性を示し続けた国・地域が、コロナ禍を脱する新たなモデルを示した。

  ブルームバーグが毎月まとめる世界で最も安全な国・地域の番付「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」では9月も、欧州諸国が7、8両月に続き上位を占めた。1位は年初から徐々に順位を上げてきたアイルランド。年初には世界最悪の感染拡大に見舞われていたが首位に躍り出た。前回1位のノルウェーは10位。

  アイルランドの驚異的な躍進をもたらしたのは、欧州全域で採用されている戦略だ。夏の旅行シーズンがデルタ株の流行と重なったにもかかわらず、アイルランドやスペイン、オランダ、フィンランドなどは隔離なしの入国をワクチン接種完了者を対象に認める動きを先駆けて始め、重症化と死亡者数を低く抑え続けた。ワクチン接種を済ませれば自由に動けるようになったことで、接種率は世界最高クラスに達した。アイルランドでは2回の接種を終えた成人の割合が90%を超え、安全に社会活動を再開することができた。

  対照的に、米国はデルタ株流行の中で順位を3段階落として28位に下げた。ワクチン接種の有無にかかわらず経済活動の正常化をそのまま続けたことで、新規感染者と死者が急増。接種率も頭打ちとなり、米国よりも後にワクチン接種を開始した国に追い越されつつある。日本は米国に次ぐ29位と、4段階順位を上げた。

ブルームバーグCOVID耐性ランキングの補足説明

  COVID耐性ランキングは、どの国・地域が社会・経済への打撃を最小限に抑えながら最も効果的に対応できているかを示す月ごとのスナップショットだ。感染抑制や医療の質、ワクチン接種率、死亡率、渡航再開・国境閉鎖緩和の進展度合いなど12のデータ指標に基づいて、新型コロナに立ち向かう世界の53の国・地域を比較している。

  9月も東南アジア諸国がランキングの下位を占めた。下位5カ国はインドネシア、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン。この地域の感染はピークを付けた可能性もあるが、輸出主導の経済への打撃は大きい。

  一時はウイルス封じ込めの優等生ともてはやされたアジア太平洋地域は、ワクチンの時代に乗り遅れた。デルタ株の強い感染力の中では厳しい制限措置も効果が薄れたほか、実質的な国境閉鎖が長期に及んでいるかつての上位占有国・地域は経済をいかに再開させるかという問題に苦しんでいる。

  昨年11月のランキング開始時1位のニュージーランドは38位と、8月からさらに9段階も順位を落とした。同国では感染ゼロが数カ月続いた後、デルタ株侵入を受けて都市や地方によって、さまざまなレベルのロックダウン(都市封鎖)が実施されている。ワクチン接種率の向上に取り組みつつ、コロナ根絶を目指している。

  シンガポールは「感染ゼロ」戦略からワクチン接種で経済を再開させる方向に舵を切りつつあるが、感染拡大で一部制限措置の再導入を余儀なくされ、11段階後退して今月は19位。

  ますます明らかになりつつあるのは、パンデミック(世界的大流行)の終わりはまだ先ということだ。一部の国・地域にとっては特にそうだ。

  世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が「全人類にとっての恥」と呼んだワクチンを巡る不平等は残り、途上国・地域はランキングの下位半分にとどまっている。ワクチン接種がほとんど進まない国・地域の多さは、危険性の高い新たな変異株の出現リスクを高める。同時に、先進国では1巡目のワクチン接種による免疫効果が薄れ始めている。

  豊かな国による「ブースター」接種がワクチンの不平等をさらに悪化させるのか。欧州はウイルスが広がりやすい冬が到来してもコロナへの耐性を保てるのか。また、ワクチン接種が進むにつれてアジア諸国・地域は上位に復活できるのか。

  これらの問いが、次回10月のランキングの焦点になる。

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