(ブルームバーグ): 国内の証券会社がESG(環境、社会、企業統治)関連業務を相次ぎ強化している。各社は専門部署を設置し、債券や株式発行による資金調達だけでなく、脱炭素に向けた企業の移行(トランジション)戦略に関する助言業務などESGに関わる機能の集約を進める。

  大和証券は1日、ESG債や関連株式の引き受けのほか、企業の合併・買収(M&A)支援などESG関連事業を統括するサステナビリティ・ソリューション推進部を新設した。SMBC日興証券、みずほ証券もそれぞれ9月と4月に組織を改編し、取り組みを強化している。

  各社はこれまで債券引き受け部門を中心に商品ごとに対応してきたが、ESGに特化した部署を設置し、より広範な関連業務を推進する体制を整えた。大和証の清水一滴サステナビリティ・ソリューション推進部長は「プロダクトを横断するESG関連ビジネスの提案・執行が可能な体制構築」を目指し、「社内の知見を集約し責任をもって扱える部署を作った」と話す。

  ブルームバーグNEFによると、世界のサステナブルファイナンス市場(ESG債とローン合計)は拡大が続く。株式市場でも子育てや介護支援を手掛けるポピンズホールディングスが昨年、SDGs(持続可能な開発目標)達成に資する事業として国内初の「SDGs IPO(株式新規公開)」を実施した。脱炭素化経営を目指す企業の新たな資金ニーズも生まれつつある。

  みずほ証サステナビリティ推進部の森下修部長は、「脱炭素をはじめサステナビリティーに関する経営課題は複雑化、高度化している」と指摘する。同証ではESG債の組成を支援する専門デスクを17年に設置して以降、持続的な発展も視野に「金融機関として貢献すべき取り組みを積極的に推進している」と言う。

  SMBC日興のチヴァース陽子サステナブル・ファイナンス部長は、SDGsファイナンス室が担ってきたESG債に加え、「株式を含む資本政策や事業戦略の観点からも企業のサステナブル経営をサポートしていく」と言及。昨年10月に比べ倍増の20人規模とした陣容は「今後も拡大していく方向」だと述べた。

  このほか、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は4月、ESG関連商品の企画・開発のほか、官公庁や評価・格付け機関との調整を担うESGファイナンス&新商品チームを組織化。野村証券は日欧でESG債の専任チームを増員している。野村ホールディングスは2026年3月までの5年間で14兆円規模のサステナブルファイナンス案件に関与する方針を表明した。

人材投資が急務

  立教大学の河口真理子特任教授は、多くの事業会社にとってESGがビジネス戦略になりつつある中、グリーンボンド(環境債)発行などESGファイナンスが戦略実現の手段になると提案できるのは証券会社だとの認識を示した。

  ただ、現状では必要なESGの専門知識が足りていないとし、債券発行を促すにしても、まずは「事業会社が直面するリアルかつ具体的なESG課題を理解しなければ議論のテーブルにつけない」と強調。ビジネスチャンスは大きいだけに「知見を広げるための人材投資が急がれる」と述べた。

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