(ブルームバーグ): 世界的なエネルギー危機の深刻化は、電力消費の多い企業の株式に打撃を与える一方、エネルギー生産企業の株価を急上昇させている。

  新型コロナウイルス禍からの景気回復でガスや石炭の需要の需要が増えているが、供給は追いついていない。北半球の冬が近づき、電力使用量が世界最大の中国は国有エネルギー会社に冬季の供給確保に全力で取り組むよう厳命。投資家は勝ち組と負け組の選別を急いでいる。

  キャボット・オイル・アンド・ガスやコノコフィリップスといった国際的エネルギー生産企業で構成される株価指数は過去1カ月に10%近く上昇。公益企業株は反落し、今年の上昇を帳消しにした。素材株も軟調で、MSCIワールド指数では出遅れが目立つ。 

  スマートサン・キャピタルのファンドマネジャー、スミート・ローラ氏は「エネルギー危機は今後数年間は続く可能性がある」と述べ、「エネルギー株は大きなリターンを生み出す準備が整っている」と指摘した。

  中国の製造業活動を測る指数は9月、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来初めて活動縮小を示した。電力不足が響き、米アップルやテスラといったテクノロジー大手のサプライヤーの生産も一部停止したと伝えられている。一方で、経済活動再開を背景に欧州の天然ガス在庫も不足。ホワイトハウスは石油価格の高騰に懸念を表明している。

  エネルギー危機が株式市場にどう影響していくのか注目点を以下にまとめた。

エネルギー生産者

  ガスや石油、石炭を生産する企業は、冬が近づき需要が高まるのに伴い、追い風を受ける見込みだ。ロイヤル・ダッチ・シェルやトタルエナジーズ、イタリア炭化水素公社(ENI)、BPはさらなる株価上昇の可能性のある欧州大手企業だ。アジアでは、ウッドサイド・ペトロリアムやペトロナス・ガス、INPEX、インド石油ガス公社、リライアンス・インダストリーズといった企業にトレーダーは注目している。

  グローバルCIOオフィスのゲーリー・ドゥーガン最高経営責任者(CEO)は「短期的な需給不均衡という問題だけではない。エネルギー危機は市場にとって最悪のシナリオ、つまりスタグフレーションにつながるため、非常に憂慮される」と指摘した。

  ゴールドマン・サックス・グループのアナリストは、ガス市場の今の需給逼迫(ひっぱく)が来年も続くと、トタルの利益を18%、ENIの利益を12%それぞれ押し上げる可能性があると先週のリポートで予測した。

  米エクソンモービルは9月30日、ガス価格上昇で7−9月(第3四半期)利益が約7億ドル(約777億円)増加する見通しを示した。3年ぶりの高値圏にある原油価格もエクソンには追い風で、シュルンベルジェやコノコフィリップス、ハリバートンなどもトレーダーの注目を集めるだろう。

  対照的に、中国燃気(チャイナ・ガス・ホールディングス)や香港中華煤気(ホンコン・アンド・チャイナ・ガス)、昆侖能源(クンルン・エナジー)などガス供給会社は、投入コストの上昇を転嫁することが認められなければ利益率を圧迫される恐れがある。

  石炭価格の高騰で注目すべき主要銘柄は米国のアーチ・リソーシズとピーボディ・エナジー、欧州のグレンコア、中国神華能源(チャイナ・シェンファ・エナジー)、中国中煤能源(チャイナ・コール・エナジー)などだ。

素材と金属

  電力価格の上昇は全ての使用者に打撃を与えるが、エネルギーを大量消費する素材や金属の会社には特に深刻だ。アジアでは、中国アルミ(チャルコ)や宝山鋼鉄、鞍鋼軋鋼などが含まれる。欧州建材メーカーのシーカや鉄鋼メーカーのアルセロール・ミタル、セメント会社のホルシムもそうだ。米国では、鉄鋼メーカーのニューコアと塗料メーカーのシャーウィン・ウィリアムズも注目されよう。

電力会社

  政府を後ろ盾とする電力会社の多くは利益率への圧力に直面する可能性があるが、規制が緩めであるか独立した電力会社は、電力価格上昇から利益を得る可能性が高い。

  バークレイズのアナリストらは、欧州北部の規制がさほど厳しくない地域では電力価格のさらなる上昇で勝ち組が生まれると予想し、フランス電力(EDF)やエンジー、フィンランドのフォータム、ドイツのRWEに言及。特にEDFについては1株利益の大幅な増加を見込む。

  これに対し、欧州南部の規制の厳しい公益事業会社はこれまでに株価への打撃が目立ち、スペインのイベルドローラやエンデサの株価はいずれも約1年ぶりの安値圏にある。

  アジアの潜在的負け組は韓国電力公社と東京電力などで、米国ではサザンやアメリカン・エレクトリック・パワー、デューク・エナジーが圧力に直面する可能性がある。

(素材・金属セクターや電力業界を追加して更新します)

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