(ブルームバーグ):

インフレと景気停滞が共存する「スタグフレーション」は、わずか数カ月前には突飛な考えのように見えていたが、今やウォール街の誰もが心配しているように見える。

  世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツのグレッグ・ジェンセン共同最高投資責任者(CIO)は、成長を妨げる物価の上昇が「真のリスク」であり、多くのポートフォリオが著しく影響を受けると述べた。ドイツ銀行がマーケットの専門家を対象に実施した調査では、ある種のスタグフレーションに陥る可能性の方が高いというのが「かなり強いコンセンサス」だった。ゴールドマン・サックス・グループは投資家に押し目買いを勧めているが、ストラテジストによると、顧客との会話の中で最も多かった話題は「スタグフレーション」だったという。

インフレは一過性、押し目買いの好機−ゴールドマンとJPモルガン

  こうした議論の是非はともかく、エネルギー価格が数年来の高水準になっていることや、根強い供給不足が世界的にサプライチェーンを圧迫していることについては警鐘が鳴らされている。こうした要因が物価圧力を高め、債券利回りを上昇させている半面、経済成長が減速しつつある中で米連邦準備制度など世界の主要中銀は景気刺激策の巻き戻しを検討している。9月の米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが2カ月連続で予想を下回ったこともあり、市場では13日に発表される9月の米消費者物価指数(CPI)に対する注目が高まっている。

米雇用者数、19.4万人増に減速−2カ月連続で予想を大きく下回る (2)

  ブリークリー・アドバイザリー・グループのピーター・ブックバー最高投資責任者(CIO)は「インフレは『一過性』と主張する陣営が考えていたよりも根強く持続的であり、インフレとその要因がひいては経済成長を鈍らせているというのが現実だ」と述べた。

震源はエネルギー価格

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は11日、2014年以降で初めて1バレル=82ドルを上回った。

  プリンシパル・グローバル・インベスターズによると、エネルギー価格の上昇が消費抑制につながる恐れがあることから、商品価格の高騰が市場でのスタグフレーション懸念の中心となっている。ゴールドマンのエコノミストは個人消費の回復の遅れを理由に、今年と来年の米成長率見通しを引き下げた。

ゴールドマン、2021年と22年の米成長率予測引き下げ−消費回復遅れで

株式市場も雰囲気一変か

  S&P500種株価指数は過去最高値を約4%下回る水準にとどまっており、株式投資家は今のところ落ち着きを保っているように見える。しかし、7−9月(第3四半期)の決算発表シーズンが始まり、経営陣がサプライチェーン問題やコスト上昇を話題にするようになれば、そうしたムードが一変する可能性があるとミラー・タバクのマット・メイリー氏はみている。

  「多くの企業が利益率の圧迫について語り始めれば、株式市場はすぐにスタグフレーションを織り込み始めるだろう」と同氏は語った。

©2021 Bloomberg L.P.