(ブルームバーグ): 「微アルだとアルコールが入っているので、飲み会に参加している気分になる」。都内の会社員、大河内一貴さん(24)はこれまであまり酒を飲まなかったが最近、焼き肉とビールが実は合うことに気付いたと話す。

  コロナ禍で業務用の酒類販売が落ち込む中、国内で飲酒可能な年齢ながら日常的な飲酒習慣がない層の8割にあたる約6000万人の開拓を目指し、ビール各社はアルコール度数が1%以下の微アルコール飲料を相次いで投入している。

  微アルの先駆者であるアサヒグループホールディングス傘下のアサヒビールの発表によると、微アルを含むアルコールテイスト清涼飲料の9月売上金額は、前年比41%増と7カ月連続の2桁増を記録した。同社は今年3月30日にビールテイストの「ビアリー」、9月にハイボール風の「ハイボリー」の販売を開始。売り上げ増に寄与した。

  「ザ・ドラフティ」を9月に投入したサッポロビールでも同製品のリピート率が20%と、近年発売したノンアルコール商品を大きく上回るリピート率を記録している。

  アサヒビールは市場の伸びを見越して、2025年までにビール類、缶チューハイなどの「RTD(レディ・トゥ・ドリンク)」、ノンアル商品の販売量に占める度数3.5%以下の低アルコール商品の比率を20%に引き上げることを計画している。19年度比で3倍強の割合となる。

  「あまりお酒と関わり合いのない6000万人が市場に入ってくることが重要」と同社のマーケティング本部新価値創造推進部の梶浦瑞穂部長は話す。

海外でも低アルの流れ

  低アルコール商品への注力が加速しているのは海外も同様で、バドワイザーやコロナビールを手がけるアンハイザー・ブッシュ・インベブは25年までに世界で販売するビール販売数量の20%をノン・ローアルコールビールにすると発表している。

  アルコール飲料調査会社のIWSRが2月に公表した調査によると、世界のノン・ローアルコール消費量は20年から24年にかけて31%増加する見込みだ。日本市場は同期間に年平均6%の成長が見込まれる。

  飲酒可能な20−60代の人口はおよそ7700万人(総務省調べ。アサヒビールは8000万人と設定)。そのうち、メーカー側はこれまで日常的な飲酒習慣のある2000万人を相手に商売をしてきた。

  ただ、消費者の嗜好(しこう)の変化や高齢化で1990年代半ばから飲酒量は減少している。特に週3日以上、清酒換算で1日1合以上飲酒する飲酒習慣率はこの20年ほどで20代の男性で34.9%から12.7%、女性は6.1%から3.1%まで低下した。

  健康志向などからお酒をあえて飲まない、「ソバーキュリアス」の流れもある。消費者行動を専門とする、ニッセイ基礎研究所生活研究部の久我尚子氏によると、酔っ払って問題行動を取ってしまうリスクなどを鑑みると、酔うのは費用対効果が悪いと感じるため、酔いたい若者は減っている。

  娯楽の多様化やSNSの普及により、実際に友人と会わずとも「ゆるくつながれる」ことも背景にある。今の若者は、合理的に自分の好きなお酒を楽しむとし、「濃度を薄く飲みたいという需要があるかもしれない」と久我氏は指摘する。

酒好きにも需要

  飲酒習慣のない消費者の開拓と同時に、飲酒を控え始める消費者の受け皿も必要になる。特に飲酒量の多い40−50代をターゲットに発売されたサッポロビールの「ドラフティ」は、ビール好きの購入も増えている。

  サッポロビールのビール&RTD事業部リーダーの岡崎仁美氏は、酔いをコントロールできる商品として「ドラフティ」が定着するとし、コロナ禍で生活様式が変わる中、「オンとオフがシームレスになっていることで時間の使い方や健康意識が顕在化している」と指摘する。

  一方で、酒類業界としてはESG(環境・社会・企業統治)の観点から過度な飲酒を防止するよう取り組むことも求められている。

  アサヒGHのほかオランダのハイネケンなど13社が加盟する「責任ある飲酒国際連盟」は、アルコール飲料を製造する企業の社会的責任を果たすため、国連の掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にも含まれる飲酒などに起因する疾患からの死亡の減少や、アルコールの有害な摂取防止などで連携している。

  みずほ証券の佐治広シニアアナリストは、低アルコールに注力する取り組みは新しいチャンスだと指摘する。

  低アルコール商品の利益的なインパクトは限定的ではあるが、「長い目で見れば、日本のマーケットでこうした需要を取り込んでいかないといけないので、重要性は高い」と話した。

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